チーム・マネジメント

有人宇宙の運用管制から、チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

2015-01-01から1年間の記事一覧

決める前に再確認しておくべき 【意思決定を歪める罠】

人間が意思決定を行うに当たり、時間制約や情報制約(未確定な情報)もあり、冷静で客観的に判断できないことも多いです。そのため、意思決定のスピードは遅くなりますが、所定のプロセス(稟議、会議に諮る等)を経て、個人的な判断から組織的な判断として…

日本の航空史から何を学ぶのか? 【海軍の教え】

目的を持った人の集まり(組織) すなわち チームを考えるにあたり、歴史から学ぶことも多いです。航空宇宙を学んでいると、零戦(零式艦上戦闘機)が登場して、零戦の主任設計者が堀越 二郎氏であることはよく聞かされました。その後に文献を読んで知ったの…

逃げいてく失敗を記録する【ハインリッヒの法則】

失敗(Failure)と聞いて、負の印象しか抱かないかもしれませんが、失敗をしないように怖れて生きていくことで良いのでしょうか。本当に、失敗は負の側面だけでしょうか。失敗にも多くの種類があり、単純なミス、注意不足、検討が十分でない、新たな発見が得ら…

加速して限界速度を超え、持続は力なり 【慣性の法則】

慣性の法則(the law of inertia)は、ニュートン(Newton)運動の第一法則とも言われ、物体は外力の作用を受けない限り、静止または等速度運動の状態を続けることを示しています。宇宙機の運動も基本的にはニュートン力学(Newtonian mechanics)を用いて表すこと…

現代を生きるには避けて通れない 【ストレス】

我々は、気付いてみれば、何時からかストレス(Stress)と言う得体の知れないものを感じるようになってきました。確かに、未だストレスを直接見たこともなければ、どこに存在するかもわかりません。ストレスの語源は「ゆがみ」「ひずみ」「重荷」などを意味し…

ノイズに囲まれた社会の中で 【S/N】

情報を送信側から受信側へ伝送しますが、有意味の情報のことをシグナル (Signal)と呼んでいます。そして、伝送の過程においてノイズ(Noise)も乗ってきて受信側へ伝わっていきます。受信した情報には、有意味なシグナル、無意味なノイズ が含まれます。シグナ…

人間はウィルスに打ち勝てるのか 【インフルエンザ予防】

地球に最も近づくスーパームーン(Super Moon)の時期も重なった中秋の名月を鑑賞して、日に日に夜が長くなり、朝夕の気温も下がってきました。冬に近づき、風邪も流行る季節を迎え、体調管理を気にし始めます。シフト勤務のため、風邪を引いたからといっても…

色は何を訴えているのだろうか ?【色彩】

色彩は、芸術やデザインのみに検討されるものではなく、日常生活や様々な作業においても重要な役割を担っています。何色を選択するかについて、製品の外装、画面デザイン、資料作成、服装についても悩むことが多いかと思います。光の3原色-赤(Red)、緑(Gre…

チームにおいて防護システムを確立せよ 【ダブルチェック】

「ダブルチェック」とは、経理のみならず、あらゆる分野で、人と組織の健全性を守る「保護メカニズム」である。 京セラ名誉会長 稲盛 和夫作業の効率化、人員削減の大号令を受けて、一人で作業を実施しなければならないことが多くなってきました。作業手順に…

チームとして想像力を発揮する 【ブレインストーミング】

チームによる問題解決の方法として、ブレインストーミング(Brainstorming)は有名です。有効に活用するため、幾つかのルールを理解していたほうが良いです。基本的なルールとして以下のことがあげられます。ブレインストーミング開始前、参加者が見えるところ…

決定事項よりも決定プロセス 決断遅れのリスク 【意思決定】

様々な重要な場面において「意思決定」との用語が用いられるようになりました。ところが、日本語として「意思決定」は新しい用語であり、国語辞書(広辞苑など)にも載っていません。ご承知のように意思決定はDecision Makingの日本語訳です。Decisionは、決…

問題の核心に迫る "なぜ" × 5 【なぜなぜ分析】

トヨタ方式のカイゼンの一つとして、「不良品が出たのはなぜか、『なぜ』を5回考えろ」という考え方が良く知られています。『なぜなぜ分析』とも呼ばれています。単純ですが、極めて有効な手法です。国内のみに限らず、アマゾン創業者ベゾスも、配送センタ…

その変化の成果に対する影響を評価する 【感度解析】

感度解析(Sensitivity Analysis)は、いくつかのパラメータが変動した時、結果にどの程度の影響を与えるかを調べる手法です。感度解析について解説しようと思っていたのですが、先ず微分(Differential)から考える必要がありそうです。高校の数学で初めて微分…

忘れやすい人間が間違いなくシステムを操作するには 【チェックリスト】

業務に追われる毎日の中でTo Doリスト(やらねばリスト)を活用しています。To Doリストの活用方法は人それぞれ異なり、ノートや付箋に記入したり、パソコンやスマートフォン等のアプリを活用するなどです。ただし、基本的な機能はシンプルで、作業項目の洗…

遠隔地からシステムを操作するために必要なこと 【テレメトリ】

遠隔に設置したシステムを監視したり、目視等で確認できない状態をセンサで計測してデータとして送信することを遠隔測定(テレメトリ: Telemetry)と呼んでいます。地上ネットワークに接続されたシステムならば有線で伝送されますが、航空機や宇宙システムな…

意見の違いや対立を乗り越えて 【ディスカッション】

外国人と英語による会議となると、日本人のように発言者の声に耳を傾け、参加者の発言は少ない、静かな会議にはなりません。参加者は積極的に発言して割り込んできて、時として議論が発散してしまいます。日本人の習慣として気をつけたい点として、特に欧米…

栄光の歴史を重ね、築き上げられてきた言葉たち 【信条】

マーキュリー計画、ジェミニ計画、アポロ計画を通じて築かれ、受け継がれているNASA運用管制官の信条(Credo)があります。ヒューストンにある管制センターのいたる所に掲示され、ミッション管制の設立趣旨(Foundations of Mission Control)とも呼ばれています…

情熱を秘めて、目標を実現させる力 【モチベーション】

仕事、スポーツ、そして勉学においても、モチベーション(Motivation)が重要視されることが多くなってきました。モチベーションが高ければ、強い動機づけを受け、物事を行う意欲が高まります。しかし、常時高く維持するのは困難であり、低下している時には何…

業務におけるマニュアルの必要性を省みる 【作業標準】

今日では業務を進めるに当たり、細かな仕事までマニュアル化が進められています。マニュアル至上主義やマニュアル否定など様々な見解がありますが、明らかにマニュアルによる有効性と弊害は認識しておく必要があります。マニュアル(Manual)には、「手動によ…

時を駆け抜ける 【標準時】

昼や夜のどんな時にも、太陽や星を見て、正確な日時を言える珍しい人に会ったとしよう。・・・この人物は、時を告げる驚くべき才能の持ち主であり、その才能で尊敬を集めるだろう。しかし、その人が、時を告げる代わりに、自分がこの世を去った後も、永遠に…

危機を伝える匂い 感情となる匂い 【嗅覚】

人間の五感のなかで「嗅覚」は、匂いを検知する仕組みが複雑であり、動物的な側面も強く、未だ不明な点が多くあります。鼻腔の奥にある匂い受容体が揮発性の化学物質による刺激を受けることで「におい」を感じます。嗅覚のメカニズムとして、受容体が様々な…

空を飛ぶために 宇宙へ向かうために 【シミュレーション技術】

シミュレーション(Simulation)とは「システム挙動をほぼ同じ法則に支配される他のシステムまたはコンピュータによって模擬すること」を意味します。航空の分野でも古くから活用されています。例えば、航空機の空力特性を計測するため、実機サイズに対する実…

環境変化に耐えられる力 【ロバスト性】

システム開発において、想定した環境下において、当初の目的を達成するシステムを開発する。当然なことと思いますが、想定外の状況となっても、必要最低限の機能は維持されるべきであり、システムを崩壊を食い止めなければなりません。2011年 福島原子力発電…

現代における技術継承を再考する

日本語で『技術』と言うと、「物事をたくみに行う技巧」から「科学の理論を実際に応用し、自然を人間生活に役立つように利用する手段」までの広い意味を含んでいます。技術に訳される英単語を列挙してみると、テクノロジー (Technology)、エンジニアリング (…

記憶のメカニズムを理解する (後半) 【長期記憶】

長期記憶の特徴として、人間は時間経過とともに記憶が忘却していくことがあります。機械ならば一度データを外部記憶装置(HDD、SSD等)に記憶させれば、故障がない限り、データ欠損もなく半永久的に保持されます。それに対して、人間の記憶は細部まで正確に…

記憶のメカニズムを理解する (前半) 【長期記憶】

以前の記事人間の情報処理能力 【コンピュータとの違い】 - チーム・マネジメントにて、人間の情報処理能力をコンピュータと比較して考察しましたが、今回は記憶に焦点を当てていきます。まず、短期記憶と長期記憶について再度振り返ってみます。我々は起床…

何気なく扱っているデータと情報の違いは? 【情報エントロピー】

現代ではデジタル化(Digitize)が普及して、多くのことがデジタル変換され、データとして処理されています。情報通信技術(ICT: Information, Communication, and Technology)の発達を受けて、大量なデータが生成され、蓄積され、低コストで世界中を駆け巡って…

システム運用における規則を再考する

一概に規則(ルール)といっても、法律、組織内規定からチーム・ルールに至るまで範囲が幅広いです。人は生活を通して社会ルールを理解して自然と身につけてきます。これまでの学校教育において、日本国憲法、民法、刑法について、1条から順番に全ての条文…

全体として捉える知覚、感覚の延長 【ゲシュタルト】

人間が対象を知覚するに当たって、対象を全体として捉える特徴があります。この特性のことをゲシュタルト(独:Gestalt)と呼んでいます。ゲシュタルト特性を自覚させてくれる作品は数多く製作されており、ネットでキーワード『Gestalt』で画像検索すると参照…

自動化がもたらす弊害 【ボーダム・パニック】

人間の労働が機械に置き換えられたり、データ処理の大部分を情報処理システムが担うなどの自動化(Automation)が進められています。繰り返しの単調作業や物理的に人を超えた力が必要される作業には機械が導入されています。航空宇宙の分野でも、初期の航空機…