チーム・マネジメント

有人宇宙の運用管制から、チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

色は何を訴えているのだろうか ?【色彩】

色彩は、芸術やデザインのみに検討されるものではなく、日常生活や様々な作業においても重要な役割を担っています。何色を選択するかについて、製品の外装、画面デザイン、資料作成、服装についても悩むことが多いかと思います。

光の3原色-赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)-を学校で習い、ニュートンが実験したプリズムを用いて7色を表示させることを知っているかと思います。それは、人間が基本的に3色を知覚する3種の視細胞を持っているからです。生物が全て3色型ではなく、トンボやモンシロチョウは4色型、イヌやネコは2色型となっています。

人間が3色型となった説は色々ありますが、生命の進化から考えるのが一番説得力があります。初期の哺乳類の生活の場は、捕獲者から逃げるために地上ではなく、主に樹木の上でした。そのため、哺乳類の視覚は、最初に葉っぱの主な色である緑を識別して、葉の隙間から見える空の色である青を識別できるようになった。そして、食料であった木の実を探し出すために赤を識別できるようになったと思われています。

すなわち、主に生活をする安心できる場所の色が緑であり、緑から弛緩反応が生じます。目が疲れた時、遠くの緑を見ることによって、目の水晶体を調整する筋肉を緊張から開放できます。それに対して赤は、人間の筋肉を緊張させ、血圧、心拍を上昇させることがわかってきています。戦いにおいて、自己から流れる血の赤を見たならば、急いで逃げなければ命に関わることを進化の中で記憶しているのでしょう。緑と赤の中間色である黄色も太陽を象徴する色として識別性が高いです。

日常使われている色彩を考えても、現在ではデザインで色を選ぶこともできますが、信号機を代表として意味する色は、緑は安全、黄は注意、赤は危険の意味が含められています。

JIS(日本工業規格)が安全を確保するために決めた色(安全色)があり、交通標識や公共の場の案内など様々な場で使われています。機器の配色、画面デザイン、取り扱い説明書の作成でも基準になります。

JIS安全色
 赤  … 防火、禁止、停止、高度の危険
 黄赤 … 危険、航海・航空の保安施設
 黄色 … 注意
 緑  … 安全、避難、衛生、救護、進行
 青  … 指示、用心
 赤紫 … 放射能

色彩を受感する人間の眼の網膜には、3原色を感知する3つの「錐体(すいたい)」と明暗(白黒)を感知する「桿体(かんたい)」の視細胞があるそうです。

桿体では、明るいを白、暗いを黒で感知します。黒と白に塗り分けられた紙を見ていると、その境界部分で白はより明るく、黒はより暗く見えるようになります。この現象はマッハ効果と呼ばれ、効率よく情報を取り込めるようになっています。また、灰色のモノは、白地の上に置かれたときよりも黒地の上に置かれたときのほうがはるかに明るく見える特徴があります。

これまでの色彩に対する認識を踏まえて、計器の設計、画面デザインなどにおいて検討すべきことについて考えてみます。情報に色を与える意義として、識別性を高める、意味を与えることになります。

例えば、画面上にデータの表示する場合(背景を黒とします)、通常の範囲内ならばデータを白や緑で表示させ、範囲を逸脱した場合に赤や黄色で表示させるようにします。運用者は、一つ一つのデータを詳細に読み上げなくても、画面をスキャンしただけで異常に気づくことができます。

範囲を逸脱した場合において、更に悪化しないことを注意(モニタ)を求める値ならば黄色、異常な状態であり早急に対象しないと取り返しがつかない怖れがある値ならば赤と意味を与えておきます。色を見ただけで緊急度を理解できます。

国際宇宙ステーションにおいて、人命を守る最後の砦となる警報警告システム(Caution & Warning System)において、緊急(Emergency)又は警報(Warning)の場合には赤でメッセージが表示され、注意(Caution)の場合には黄色でメッセージが表示されます。

日本の気象警報・注意報でも、災害が起こるおそれのあるときは「注意報」を黄色で発令し、重大な災害が起こるおそれのあるときは「警報」を赤色で発令します。台風18号(2015年)通過後に線状降水帯が関東から東北にかけて通り、記録的な大雨となりました。栃木、茨城、宮城において、重大な災害が起こるおそれが著しく大きいときに発令される「特別警報」が出されました。紫色の枠を用いて表示されていましたが、初めて聞く警報で広範囲で何が起きるのか理解できませんでした。時間が経過して結果として、河川の氾濫、土砂災害によって大きな被害に見舞われました。

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Credit : NASA