チーム・マネジメント

有人宇宙の運用管制から、チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

その変化の成果に対する影響を評価する 【感度解析】

感度解析(Sensitivity Analysis)は、いくつかのパラメータが変動した時、結果にどの程度の影響を与えるかを調べる手法です。感度解析について解説しようと思っていたのですが、先ず微分(Differential)から考える必要がありそうです。

高校の数学で初めて微分積分を習います。微分積分は基礎的な考えで、物理学の法則は数学的に微分方程式の形で表されます。理系の大学では、複雑な数式に対する微分積分の計算が必要となり、私も数式と格闘していました。しかしながら、社会に出ると、微分積分の考え方は有効ですが、数式を駆使して問題を解く知識はあまり求められません。

久しぶりに微分積分学の教科書を開いてみると、「実数・関数・極限」の説明から始まっています。確かに極限の概念は必要かもしれませんが、一般的な意味で「物事の限度ぎりぎりの所」ではなく、数学的には「変化する量がある量に限りなく近づくこと」を意味します。そもそも、微分とは何か、積分とは何かという説明は全くないです。それを教えるのは、高校数学の範囲だからでしょうか。国語辞書でも「微分とは導関数を求めること」そして逆に「導関数とは関数を微分して得られる関数」と堂々巡りです。

技術者(Engineer)として、数学はツールであり、実務に活かせて初めて意味が出てきます。高校数学・物理になりますが、微分積分の具体例は速度と距離の関係です。1分間で500 mの距離を移動したとすれば、速度は500 m/分 = 30 km/時となります。距離を計測した時間を限りなく短く(1秒、0.1秒、0.01秒…)したとき、距離の微分が速度となります。逆に速度 30 km/時で1時間走れば、30 kmの距離を移動したことになります。実際には速度は時々刻々と変化していると思いますが、刻々と変化する速度を積分すると距離になります。

感度解析では、システムを構成要素をパラメータで変化させ、パラメータの変動に対する結果(成果)の変化を感度係数(Sensitivity Derivative)として算出します。レーシングカーのような速いクルマを対象として、成果として速度が出せることとすれば、速度を時間で微分した加速度が感度係数となります。感度係数が大きければ、成果に対する影響が大きいことを示しています。すなわち、加速度を大きくするには、馬力があるエンジンを搭載したり、車体を軽量化することが考えられます。

一般化すると、システムにおけるどの部分の要因と結果に着目するかを決め、実際に要因の変化と結果の変化を計測して関係を調べたり、相関関係を明確にしたモデルで表現します。そして、感度係数を求めれば、どの要因を改善していけば、良い結果が得られるかを評価できます。すなわち、感度解析を発展させると、最も結果(評価関数)を高める要因(パラメータ)を求めることになるため、最適化手法となります(以前の記事何のための最善か? 【最適化】 - チーム・マネジメント)。

見方を変えると、感度係数が大きい要因が誤ると、悪い結果をもたらすことになります。その要因の制御に注力して、優先度を高くする必要があります。逆に、感度係数が極めて小さい要因ならば、変動しないように処置して、制御対象から外すことができます。大規模複雑なシステムに対する評価手法として、感度解析というツールもかなり有効です。
ところで、人間の宇宙飛行はアメリカに何をもたらすのだろう? 何よりもまず、自由な国民が一致協力して取り組めば、不可能なことなど何もないのだという人々に再認識させることができる。そして若者たちのインスピレーションを刺激し、STEM  科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematic)分野への興味を惹きつける。と同時に有人宇宙飛行計画を精力的に進めることで、ハイテク分野ならびに最先端宇宙航空産業分野で働く機会を多数の労働者に提供できる。さらに、協調的な国際関係を培い、外交政策におけるアメリカのリーダーシップが確実に維持できるようになる。   アポロ11号月着陸船パイロット  バズ・オルドリン

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Credit: NASA