目標達成のためにフィードバックを活用する 【フィードバック】
制御工学で重要な設計手法として、フィードバック(Feedback: 帰還)設計があります(以前の記事)。フィードバックとは、システムにおいて出力の一部を入力側に戻して出力を調整することです。教育や指導において、訓練を受けた後に行動してもらい、その結果をみて行動を補正させることもフィードバックと呼んでいます。通常の業務においても、指導的な立場からフィードバックを受けることもあります。
フィードバック制御では、ネガティブ・フィードバック(Negative Feedback: 負帰還)で構成されます。目標値と制御量(実際の値)を比較して、制御量が目標値に近づくように、その誤差(フィードバック信号)を逆の属性で入力側に戻します。すなわち、制御量が目標値よりも大きければ入力を絞り、制御量が目標値よりも小さければ入力を増加させます。ネガティブ・フィードバックでは、目標値に近づき、その後に目標値に維持することができるため、安定したシステムとなります。
それに対してポジティブ・フィードバック(Positive Feedback: 正帰還)では、出力が増加した分に応じて入力も増加させて、更に出力を増幅させます。振動が徐々に大きくなる共振を引き起こすため、不安定なシステムとなり、制御方式としてポジティブ・フィードバックはあまり取り入れられません。ポジティブ・フィードバックが用いられているのは、電波を生成する発振器などです。例として、地球環境はポジティブ・フィードバックとなっており、温暖化が進めば水蒸気が増加し、更に気温が上昇して、暴走する可能性があります。逆に寒冷化が進めば、地表が雪や氷で覆われて宇宙へ熱を反射するため、氷河期が進行します。
人間でも目標すなわち予測した結果を得るために行動をしています。望んだ成果が出せないとすれば、ネガティブ・フィードバックを効かせて行動を変える必要があります。自己でフィードバック方法を身につけていれば、自ら補正して行動を正すことができるかもしれません。そのような高みに到達していなければ、コーチや上司など指導的な立場からフィードバックを受けて、行動を修正する必要があります。
相手の行動を変えるためには、コミュニケーション・会話によって改善点を伝えなければなりません。ただし、ネガティブだけで改善点だけ伝えても、人間には感情もあるので負の側面は素直に受け入れてくれないかもしれません。雑談で雰囲気を和ませたり、良い面も指摘したうえで、改善点を具体的に丁寧に伝える必要があります。
それに対してポジティブ・フィードバックは、次の次元に進み、高い目標値を達成するために活用できると思います。ただし、ポジティブ・フィードバックを継続しただけでは、限界に達したり、無理な目標で規則を破って、常軌を逸してしまうかもしれません。現在広まっている成果主義の弊害を表しているようです。
人間の行動におけるフィードバックの仕組みとは、PDCA(Plan, Do, Check and Action)のサイクルでも表すことができます。PDCAサイクルは、品質管理で有名なデミング博士が提唱し、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)を繰り返して、Action(改善)の結果を次のサイクルのPlan(計画)へ反映させることです。PDCAには様々な提言がされていますが、私の個人的な意見として、最初にPlanから始まる(計画ができないと行動しない)こと、DoとActionの違いが明確でないため、制御的な単語に置き換えてPDCA(Predict, Drive, Confirm and Adjust) すなわち Predict(予測)、Drive(進行)、Confirm(確認)、Adjust(調整)のサイクルと読み替えた方が理解しやすいです。
他のメンバーに仕事を任せるには、委任(Delegation)の方法が重要になります。仕事のやり方や手段について細々と指示する委任もありますが、仕事の成果に焦点を当てたほうが委任による効果が高いです。一つひとつの行動を確認せず、大きなフィードバック機構として、目標とする成果に対して現状を評価して、改善するプロセスを構成すべきです。それには、達成すべき成果、守るべきガイドライン(Guideline)、使用できるリソース(Resource)を明確にしておく必要がありそうです。
フィードバック機構があれば、目標に向けて進んでいき、絶え間なくフィードバックを受けて修正して、必ず目的地に到着することができます。
参考文献