チーム・マネジメント

有人宇宙の運用管制から、チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

システムの内部を見えるのか? 操作できるのか? 【現代制御理論】

本ブログでは、チームに焦点を当てていますが、ミッションを達成するため、チームはシステムの一部として活動する必要があります。システムという概念は様々な対象に当てはめられますが、ここでは組織や人間-機械システムに対する考察も進めていきます。


私にとって、対象をシステムとして捉えるあたり、基礎となっているのは制御工学です。今回は現代制御理論(Modern Control Theory)からシステム思考のために少し役立ちそうな考え方を取り上げていきます。現代制御理論について詳細を説明することはしませんので、興味ある方は参考書を手にとってみて下さい。


現代制御以前の制御理論を古典制御と呼ぶようになってきましたが、古典制御では制御対象の1入力と1出力の関係に着目してきました。それに対して現代制御理論では、制御対象を多入力と多出力のシステムとして理論が展開されます。行列(Matrix)を用いてシステムを記述できるため、行列計算が得意なコンピュータを有効に活用できます。

 

現代制御理論の応用として、今回取り上げる可制御性・可観測性、その他に最適制御(Optiomal Control)、カルマンフィルタ(Kalman Filter)などが挙げられます。

 

可制御性(Controllable)

有限時間でもって任意の初期状態から希望の状態へ移すことが可能なような制御入力が存在するとき、システムは可制御(Controllable)であるという。

 

可観測性(Observable)

出力をある有限時間だけ観測することによって初期状態を知ることができるとき、システムは可観測(Observable)であるという。ただし、観測時間にわたって入力は既知とする。

 

すなわち、システムの内部状態を全て理解把握することはできませんが、限られた手段で目的の状態へ持っていけるならば可制御、限られた成果を確認することで状況が分かるならば可観測であると言えます。可制御性がないのに操作しようとしても無駄の努力になり、可観測性がないのに確認しようとすれば全く意味のないデータになるかもしれません。

 

可観測に関して、当初変化ないと思われていたものが、長期的に見たら別の次元に移っていたなどが生じます。システムの挙動として、入力を受けて出力は徐々に変化して目標値に達します。制御では、この遅れ特性を示す指標として時定数(Time Constant)が用いられます(時定数は目標値の63.2%に達する時間です)。時定数が数日であるに数時間を見ただけではシステムを理解することはできません。

 

このように時間に関わる人間の感覚とのずれを認識しておく必要があります。例えば、自然や宇宙に関する映像は長時間視聴しても変化が乏しいような気がしますが、早送りで見てみるとダイナミックに変化していることがわかります。時定数が大幅に長い事象では、いわゆる「ゆでカエルの運命」を辿らないように、定期的に現在位置を確認する必要があります。

 

 

参考文献