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チーム・マネジメント

チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

忘れやすい人間が間違いなくシステムを操作するには 【チェックリスト】

業務に追われる毎日の中でTo Doリスト(やらねばリスト)を活用しています。To Doリストの活用方法は人それぞれ異なり、ノートや付箋に記入したり、パソコンやスマートフォン等のアプリを活用するなどです。ただし、基本的な機能はシンプルで、作業項目の洗い出し、優先度付け、期日管理、作業状況確認が可能となります。

過去の記事 記憶のメカニズムを理解する (前半) 【長期記憶】 - チーム・マネジメントでも触れましたが、人間の短期記憶は、一度に記憶できる関連無い文字・数字が「7プラス・マイナス2個」と小さい上に、再生までに許される時間が10秒から20秒程度と非常に短い特徴があります。しかも他からの情報が入ると消去されてしまいます。人間は忘れる生き物であり、多くの作業項目は覚えられず、抜ける作業が出てきます。逆に、リストを作成していれば、積極的に覚える必要もなく、一時的に忘れても問題なくなります。

チェックリスト(Checklist)も同様であり、備忘として、目的を達成するために必要な事項、実施すべきこと、検討すべき点を記載したリストのことです。日本語訳として「照合表」が用いられることがありますが、意味が違ってきます。照合表ならばVerification Tableでしょうか。

チェックリストはマニュアルの一部ともなりますが、航空宇宙においてチェックリストは運用手順(Procedure)を示すことが多いです。例えば、機器の起動手順ならば、順次実施すべき作業ステップを上から並べておきます。上から順番に作業ステップを実施していき、ステップ実施後にチェックマークを記入して履歴を残しておきます。チェックリストを完了させれば、停止していた機器を起動の状態へ変更させることができます。

チェックリストを導入する利点として、細かい点を覚えたり、小さいことに煩わされることがなくなります。機器を起動したいならば、機器起動のチェックリストを実行するだけです。その場で、機器を起動するために、何を準備して、どこから手をつけるかをいちいち考える必要はなくなります。

運用者はチェックリストの通りに操作しますので、チェックリストにはエラーが存在せず、完全さが求められます。そのため、実機のシステムへ適用する前にチェックリストは必ず検証されている必要があります。実機に対するシステム試験から実績のある試験手順をチェックリストへ書き写したり、模擬度の高いシミュレーター(High-Fidelity Simulator)を用いて目的通りにチェックリストが機能することを確認します。

検証されているとしても、過去に使用実績があるチェックリストは信頼性が高いですが、初めて使用する新規のチェックリストは仕上がりが十分でない可能性もあります。ベテランから新人まで同じチェックリストを使用しますし、人によって操作が異なるならば書き方が正しくありません。問題が識別されたチェックリストは直ちに改訂が必要となります。そのため、改訂を承認するプロセスは予め定めておきます。

チェックリストには、参考情報をNote(注記)として追記したり、警告や注意事項などの重要な事項をWarning(警告)又はCaution(注意)として明記します。Noteは参考ですので、斜め読みで手順を実施しても大きな事にはなりません。しかし、Warning又はCautionならば、記載事項を守らないと重大事故に繋がる可能性があります。

国民性として、日本人も含むアジアの人は、Noteも含めて細かな部分まで遂行しようとします。その反面、パニックに近い状況になると、Warning / Cautionなども抜け、事故を起こします。欧米人は、Noteを忠実に守らない時も多いですが、Warning / Cautionに記載されている禁止事項はほとんど実行しません。

最近の電子機器の取り扱い説明書には、「安全上の注意」が何ページにも渡って記載されています。日本人の感覚では、全ての注意事項は守るべきであり、あまり深刻さを理解しないでいます。欧米人は、WarningやCautionの文字を通じて、守らなかった場合におけるリスクの違いを瞬時に理解します。

Warning(警告)
 もし無視すれば、人が死亡もしくは重傷を招くこともある。

Caution(注意)
 もし無視すれば、人が障害を招くことおよび物的損害の発生することもある。

チェックリストやマニュアルの作成では、Warning(警告)、Caution(注意)、Note(注記)の違いについてチーム内で再度確認しておくべきです。

参考文献