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チーム・マネジメント

チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

記憶のメカニズムを理解する (前半) 【長期記憶】

以前の記事人間の情報処理能力 【コンピュータとの違い】 - チーム・マネジメントにて、人間の情報処理能力をコンピュータと比較して考察しましたが、今回は記憶に焦点を当てていきます。まず、短期記憶と長期記憶について再度振り返ってみます。

我々は起床していれば膨大な情報(毎秒10億ビット相当)を受け取っています。しかし、脳が一度に処理できる情報は限られているので、行動に移すまで情報を一時保持する場所として短期記憶(又は 作業記憶 : Working Memory)があります。短期記憶は、一度に記憶できる関連無い文字・数字が「7プラス・マイナス2個」と小さい上に、再生までに許される時間が10秒から20秒程度と非常に短い特徴があります。しかも他からの情報が入ると消去されてしまいます。

例えば、次の番号『02053829471』を10秒見て、目を閉じて思い出して下さい。覚えられましたか? 完全に暗唱できたならば、優れた短期記憶の能力をお持ちの方です。次に『020-538-2947』はどうでしょうか? 同じ数字なのに覚えやすく感じます。短期記憶は、無秩序の並びよりも、あるまとまり(関連性)を持たせたほうが記憶しやすくなります。昔から電話帳において同様な手法が用いられています。さて、少し時間が経ちましたが、ここで目を閉じて先ほどの番号を思い出せますか? 

短期記憶の特性を考慮して、情報処理システムにおいて一度に「7プラス・マイナス2個」程度のデータを入力する画面設計としたり、一時的に記憶する情報は小さく、短時間で使用するようにしたり、重要で情報量が多い場合にはノートに記載するなど、作業指示を行う手順に工夫が必要となります。

それに対して、一般的に知識の記憶などで使用される長期記憶(Long-Term Memory)は、人間の脳の中で神経細胞(ニューロン: neuron)が結合・ネットワーク化して、情報伝達・記憶がなされます。有効な記憶術をマスターすれば、人間の脳には10の20乗ビットにも相当する情報を記録することできるそうです。

長期記憶には2つのタイプの記憶があります。一つ目は、勉強などで日頃行っている言葉を意味を伴って記憶する(Semantic Memory)。二つ目は、印象深い経験・体験したこと(読書や映画などを通じた疑似体験も含みます)を記憶する(Episodic Memory)。後者は、「自伝的な記憶」とか、「エピソード記憶」とも呼ばれます。

記憶される事柄は最終的に大脳皮質の神経細胞がネットワーク化されて保持されます。記憶のメカニズムにおいて、側頭葉(海馬、扁桃体、側頭葉皮質)が重要な役割を担っていることが分かってきています。側頭葉が、経験や体験をコード化し、種類別に分類し、共通点を見極めて大脳皮質にその情報を配分します。大脳皮質は「記憶保管所」であり、側頭葉は「記録保管人」とも考えられています。そのため、側頭葉に異常が起きると記憶障害が現れることが報告されています。

脳が活動するためには、多くのエネルギーが必要であり、神経組織へ酸素供給を続けなければなりません。したがって、健康状態を良好に保って、脳への血液を促進できなければ、記憶力の向上・維持を図ることはできません。記憶力を高めるには、適度な運動で身体を整え、必要な休息をとり、質の高い睡眠を取ることが大切です。

次回は記憶について更に掘り下げて考えていきます。


参考文献