チーム・マネジメント

チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

不確実の高い世界を生きていく 【VUCA】

 世界中が混沌として見通しが立てられなくなってきました。全てが目先の短期的な利益だけを求めて動いているようです。ICT(情報通信技術)が発展して、世界中を情報が駆け巡り、世界は狭くなった感じがします。地球の裏側で生じた事件が身近な生活までも脅かすようになりました。

 ソーシャルネットワークSNS)によって、人々の絆が深まると思われましたが、実際には大きな分断を生じさせています。人々は仲間のみで繋がり、意見の異なる人の考えを受け入れず、その人々を無視することができます。好みのニュースや情報のみを参照するようになり、都合が悪いことは見えなくして、誤った事実(Fake News)が真実として信じられています(Post-Ture)。

 日本にいても危機が迫っているように感じます。日本人は平和ボケしているように思いますが、日本の周辺で紛争や問題が山積しているにもかかわらず、何も生じていないような錯覚に惑わされます。ニュースや新聞で騒いでいることはご承知の通りです。日本人が真実を知らないように、わざと隠そうとする意図が働いていると勘ぐってしまいます。

 

 現代の不確実に対して用いる言葉として、語源は軍隊用語でありますが、「VUCA」があげられます。Volatility(不安定さ)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑さ)、Ambiguity(瞹眛さ)の頭文字を取った頭字語(Acronym)です。

 不確実性が高い状況の中でどのように生きていくのか? 現代を生きる人々が最も知りたいことかもしれません。しかしながら、その不安は解消することはできなく、その不安定な時代を受け入れなれければならないです。少し将来における目標を立てたとして、外部環境は安定しており、順調に進捗できるとします。外部環境が荒れており、逆風が強ければ目標を達せられず、順風であれば大きく上振れします。リスクマネジメントでは、その振れ幅をリスクとして認識します。

 良いことも悪くなることも自分たちでは制御できません。そうするとどちらに転んだとして対応できる柔軟さが重要となってきます。その不確実な状況でも、自ら選択して制御できることも多くあります。ビジョナリーカンパニーの著者 ジム・コリンズ (Jim Collins)は、苦境があっても乗り越え、未来を切り開くリーダーを10X型リーダーと呼んでいます。10X型リーダーは、目標達成に向けて着実にペースを乱さず、20マイル(32キロメートル/時)行進を実践していきます。

状況の変化に過敏に反応し、常時「もしこうなったら?」と自問している。①事前に準備する、②補給品の蓄えを十分に確保する、③非合理的といえるほど十分に安全余裕率を高くする、④リスクを抑える、⑤良い時でも悪い時でも規律に磨きをかける、を徹底している。こうすることで、強靭で柔軟な態勢を維持しながら危機と向き合うのだ。失敗から何か学びたいならば、失敗しても生き残るほど強靭で柔軟でなければならない-10X型リーダーは心の奥底でこう理解している。 ジム・コリンズ

 

 ひと昔以前の世界ならば、多数の人々を巻き込む危機は、戦争や災害など本当に個人では避けることができないことでした。突然に現実となり、予測は不可能な外部から与えられる事象でした。世界の結びつきが強くなり、ネットワークが張り巡らされた社会となり、複雑な(Complex)システムとなりました。小さなことでも増幅されて大きな影響が生じる事態になってきます(以前の記事)。現代の不確実は、断絶的に生じるのではなく、前触れや予告が瞬時に拡大して連鎖していき、多くの人々を飲み込んでいくようです。

 ビッグデータとして大量なデータを分析すれば、不確実の世界でも次に何が起こるのかをわかるのでしょうか。優秀なデータ・アナリシスト(Data Analyst)ならば、データから複雑な現象がどのようにして起きたのかを説明できるかもしれません。ただし、予測は難しいというより、不可能に近いと思われます。新奇な事象が放り投げられれば、その後は全く異なる展開をたどっていきます。

 人工知能(AI)の発達を通じて見えてきたのは、これまで人間にしかできないと思われていた単純な思考、目的を達する知的な作業は機械に置き換えられることができることです。しかしながら、AIを実装して稼働させるためには、新規に多くのハードウェアを組み合わせ、大量な電力を必要とします。AIでも実行できる業務であっても、費用対効果を考慮すると、人間が担当したままとなる作業も残ります。

 

 現在のAIは問題解決にしか能力を発揮できないので、問題を設定したり、方向性を示すのは人間の役割となります。特に不確実性が高い時代では、全体をとらえることができる大局観を磨き、全体の中で問題の要所を抑えて、それを組織やシステム(AIを含む)を通じて解決させる(「する」ではありません)能力が重要となります。そのためには、同じ情報やデータを眺めていても、その中から相違点(Anomaly)に気づける・感じれる能力が求められるようになるのかもしれません。

 

The volcanic ash plume from Mount Kilauea

 

参考文献

  1. 「ポスト真実」の時代 「信じたいウソ」が「事実」に勝る世界をどう生き抜くか
  2. ビジョナリー・カンパニー4 自分の意志で偉大になる
  3. ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学
  4. TEAM OF TEAMS (チーム・オブ・チームズ)
  5. 「暗黙知」の経営―なぜマネジメントが壁を超えられないのか?

 

地球・生命にとって最も重要な要素 【水】

水五訓
一、自ら活動して他を動かしむるは水なり
一、障害に遭って激しくその勢力を百倍にして得るは水なり
一、常に己れの進路を求めてやまざるは水なり
一、自ら潔うして他の汚濁(おだく)を洗い、清濁(せいだく)併せ容れるは水なり
一、洋々として大海を満たし、発しては雲となり雨と変じ、凍って玲瓏(れいろう)たる氷雪と化す しかもその性失わざるは水なり


 人間は、数日食物を摂取できなくても生存を維持できますが、水の摂取が断たれれば生きてはいられません。人は成人で1日に180リットルほどの水を体内で使用しています。お風呂一杯分に相当する量です。それほどの大量な水を飲む必要はなく、体内で使用する大部分の水は、腎臓によって不純物をろ過して再利用されます。毎日飲むことや食事を通じて摂取する水の量は2.5リットルが目安とされています。

 水は人間の体内で様々な働きをしています。生命維持のために主な役割としては以下の4つがあげられます。一つの生命体として存在していますが、体外から空気や食物を取り入れて、体内の水を通じて身体の隅々まで行き渡らせます。代謝にて生成された老廃物は水に溶け込んで持ち出され、尿や便としてまとめて体外へ排出されます。

① 血液の主成分として酸素や栄養素を体内にくまなく運搬する。
② 老廃物を溶かし込み尿として体外へ排出する。
③ 体温を調節する。
④ 体液(細胞内液、細胞外液)の主要構成要素として細胞を機能させる。

 

 地球上では、大気の循環に従って雨として水が空から降ってきます。地上の生命は雨の恵みを受けて、生きるために必須な水を蓄えることができます。雨水が集まって、川となって滔々と流れ、地表に留まらずに地下に浸透します。湧き水として現れ、地下水として保水されます。地下水として汲みあげられる水は、地層によって異なりますが、数百年から数千年前に地表から地下へ浸透されてろ過された水です。

 人間の命よりも長い時を過ごした貴重な水が、ミネラルウォーターとして手軽に購入できることは驚くべきことなのかもしれません。しかしながら、地下へ浸透する水の量以上に地下水を使用すると地盤沈下を起こしてします。海洋における水の流れも、北大西洋北部や南極周辺海域で冷やされて重くなった水が沈み込み、海洋深層水となって世界を循環しています。一周するのに三千数百年をかけて移動している深層水を汲み上げて活用されています。

 

 水の惑星である地球には多くの水が存在していますが、塩水が97.5%で、淡水は2.5%しかありません。その淡水の中でも約70%は氷河や雪、氷の形で閉じ込められています。したがって、飲料水、農業用水、工業用水などで直接使用できる水は1%もありません。日本は水資源が豊富な国の一つであり、上水道の普及率も高く、水道の蛇口をひねれば飲料水が手に入ります。考えてみれば生きるのに恵まれた環境です。

 世界に視点を広げてみれば反対に水不足に苦しむ国々もあります。水を求めて離れた水源まで水汲みの重労働を虐げられたり、高額を支払って水を購入しなければならないこともあります。農業では、灌漑設備を整えて、散布用の水が必要になります。酪農・畜産においても、動物を飼育するために大量の水資源を使用します。工業では水は様々な用途で使用される資源であることは言うまでもありません。農作物、畜産物そして工業製品を輸入するということは、現地の貴重な水資源を消費していることにもなります。

 そう考えてみると、日本は技術力が高いだけではなく、環境が清潔で綺麗な水を入手できるため、高度で高品質な工業製品を製造できる能力があるのかもしれません。古(いにしえ)から日本酒を醸造できたのも、清く澄んだ水が湧き出ていたからです。

 水の再利用を図るためにも、水処理技術が重要になってきています。水と混ざっている不純物を取り除くため、ろ過によって固体物を分離します。水の利点でもありますが、様々なものを溶かしています。不純物を除去するため、酸化・還元反応が用いられます。酸化(oxidazation)とは、言葉の通りに酸素によって起こる物質の反応のことです。その可逆反応が還元(reduction, deoxidization)です。酸化によって、有機物を二酸化炭素(CO2:Carbon Dioxide)と水(H2O)に分解します。

 

 太陽系で一番多い元素は水素(H:Hydrogen)、次はヘリウム(He:Helium)であり、水素とヘリウムで元素の質量の99%を占めています。3番目に多いのが酸素(O:Oxygen)です。ただし、太陽系において太陽の占める部分が巨大すぎて、ほぼ太陽の組成比となります。地球の組成について、大気、陸、海に分けてまとめてみました。

 地球の大気を容積比で表すと、窒素(N:Nitrogen)が78%、酸素(O)が21%、アルゴン(Ar:Argon)が0.9%となります。水蒸気(Water Vapor)は場所と時間によって大きく変動して最大4%です。地球温暖化の原因となっている二酸化炭素(CO2)は上昇しており、18世紀の0.03%からまもなく0.04%に達する勢いです。

 地球の地殻は質量比で、酸素(O)が46%、ケイ素(Si:Silicon)が27%を占めます。そして、アルミニウム(Al:Aluminium)、鉄(Fe:Iron ラテン語"Ferrum")、カルシウム(Ca:Calcium)、ナトリウム(Na:Sodium, Natrium)、カリウム(K:Potassium)、マグネシウム(Mg:Magnesium)、チタン(Ti:Titanium)が含まれ、これまでの元素で99%を構成します。次が水素(H:Hydrogen)となりますが、軽いこともあって構成比0.14%です。炭素(C:Carbon)は0.03%に過ぎません。

 海水の成分は、水(H2O) 96.6%、塩分 3.4%から構成されます。この塩分として、塩化ナトリウム(NaCl:Sodium Chloride) 77.9%、塩化マグネシウム(MgCl2:Magnesium Chloride) 9.6%、硫酸マグネシウム(MgSO4:Magnesium Sulfate) 6.1%などが挙げられます。

 

 水分子(H2O)を構成できる水素(H)と酸素(O)は宇宙では多いことになりますが、地球では海に大部分(97.5%)が含まれています。宇宙で水がありふれた物質であるため、地球以外にも水の惑星が存在する可能性は十分にあります。

 水分子の奇妙な振る舞いによって、生命が育まれたこともあって興味深いです。水分子を構成する酸素原子が2つの水素原子の電子をかなり強く引きつけ、酸素原子はマイナスに、水素原子はプラスに帯電した状態になっています。そのことが水分子同士の結合を更に強くしています。この強い分子間力が働いているため、摂氏0度から100度の広範囲において、水が液体の状態を維持できます。

 私たちの身の回りで常温で液体となる物質は、水はもとより、油として食用油、石油やガソリン、そしてアルコールくらいです。金属では水銀(Hg:Mercury)が唯一の物質です。したがって、一般的に温度と圧力の狭い範囲において液体の状態になります。温度が低ければ固体となり(凝固)、温度が高くなると分子の活動が活発となって分子間力を振り切り、気体となります(蒸発)。

 

 水が凝固して氷に変わり、水が蒸発して水蒸気に変わる場合にも、奇妙な特性があります。氷を作るために水を冷やして熱を奪っていくと、水温が0度になって氷ができ始めるが0度から温度は下がりません。全て氷になってから0度以下に低下し始めます。見方を変えると、水から氷に転移すると潜んでいた熱を放出することになり、潜熱と呼ばれています。水の比熱(物質1グラムの温度を摂氏1度挙げるのに要する熱量)は1カロリーであるが、1グラムの水が凝固して放出する潜熱は約80カロリーとなり、思っているよりも大きいです。氷や雪がなかなか融けない原因もこの潜熱の大きさにあります。

 水から水蒸気に転移する場合にも潜熱があり、1グラムの水を蒸発するには約530カロリーの熱が必要です。1グラムの零度の水を100度に沸騰させるのに必要な熱量は100カロリーであり、それを蒸発させるには更に5倍の熱量が必要ということになります。水蒸気には大量な熱を潜んでいることになります。この潜熱が台風による破壊的な力を生み出すとも捉えることができます。

 化石燃料を燃やして二酸化炭素が増加して温暖化が進めば、北極・南極に閉じ込められていた氷河が溶けて、そして海水が蒸発して水蒸気になります。水蒸気も温室効果をもたらす温暖化ガスであり、小さな変化(二酸化炭素の濃度上昇)でも負のスパイラルに落ち込んで、ますます地球上の気温が上がり、水蒸気が増えて歯止めが効かないほど温度が上がります。最終的には地球上で生命は住めなくなります。


 もう一つ水の奇妙な特性として、氷が水に浮きます。グラスに氷水を入れて見慣れたことで、氷点下となった池や湖の水は表面だけが凍っています。水は4度で密度が最大となるからです(ただし、塩水は塩分が濃くなるほど密度が最大になる水温は低下します)。コップの中の対流実験を思い出してみると、冷たい水(重い水)が下層に溜まりますが、氷になると上層へ上がってきます。一般的に他の物質では固体のほうが重くなります。

 地球史において地球上が全て氷で覆われたことが2度あったことがわかっています。スノーボールアース(Snowball Earth) すなわち 雪玉地球 事件です。地球の表面が氷となっているため、太陽からの熱や光を宇宙へ跳ね返して地球の地表は温まらずに、凍てついた冷厳な銀世界が広がっていました。ますます地球は冷え切って生命も途絶えて、死する地球となるところでした。

 地球の中心では、高温を維持したマントル(Mantle)が存在し、火山活動も活発でした。海の上層は凍ってしまいましたが、地球が持つ熱によって海底には液体の水が取り残されました。そのために生命は生き抜いたとの説が有力となっています。生命を守ったのは氷が水に浮く特性があったからです。

 水の惑星は、生命に満ちた惑星になることもできますが、温まりすぎて水蒸気が多くなると高温で生命が生きられない星に、冷えすぎて氷に覆われれば生命が凍える星に変移してしまいます。現在の地球は、天の采配があったのか、生命に適した狭い領域に留まっています。両脇は崖であり、転げ落ちたら奈落の底に突き進んでしまいます。

 

Japan Looking From North to South

 

参考文献

  1. 「水」をかじる (ちくま新書)
  2. 生命の星の条件を探る
  3. 水リスク?大不足時代を勝ち抜く企業戦略
  4. 入門ビジュアルテクノロジー よくわかる水処理技術 (入門ビジュアル・テクノロジー)
  5. 謎解き・海洋と大気の物理―地球規模でおきる「流れ」のしくみ (ブルーバックス)
  6. 海はどうしてできたのか (ブルーバックス)

【惨事(Tragedy)】 ソユーズ1号事故

 1950年代から1970年代、覇権をかけて宇宙開発競争(Space Race)をアメリカ合衆国ソビエト連邦の間で繰り広げられました。第二次世界大戦において実戦配備したロケット技術をドイツ(ナチス)が保有していました。ドイツ敗戦後、ロケット技術を米国とソ連が引き継ぎました。ソ連はドイツ製ロケットV-2 (Vergeltungswaffe-2)を押収して、参考にしてロケットを開発しました。米国はV-2を開発したフォン・ブラウン(Wernher von Braun)を招き入れてロケット開発に従事させました。

 時代を遡(さかのぼ)りますが、ロケット技術の基礎を築いたのは、ロシアのコンスタンチン・ツォルコフスキー(Konstantin Tsiolkovskii)です。1898年には既に「ロケットによる宇宙探検」という書を著しています。大型ロケットは多段式が通常であり、積荷であるペイロード(Payload)を遠くへ運ぶためには、燃料を格納していた不要な構造を切り捨て、身軽になって更に加速していきます。増速量は噴射速度と質量比で表すことができ、ツィオルコフスキーの公式と呼ばれています(以前の記事)。

地球は人類のゆりかごである。しかし人類はゆりかごにいつまでも留まっていないだろう。
宇宙旅行の父 ツィオルコフスキー

 宇宙開発競争において、1957年 ソ連 人類初の人工衛星 スプートニク(Sputnik)、1958年 米国 人工衛星 エクスプローラー(Explore)、1961年 ソ連 ユーリー・ガガーリン(Yurii Gagarin)による人類初の宇宙飛行、1962年 米国 ジョン・グレン(John Glenn)の宇宙飛行(1998年 スペースシャトルで再び宇宙へ、2016年死去)などと続きました。その後、ソ連 ソユーズ(Soyuz)計画、米国 ジェミニ(Gemini)・アポロ(Apollo)計画が進められていきます。

 栄光の歴史を見ると光の部分が強調されてしまいますが、実際には生命を危険に晒して危機一髪だった事件も多く、あまり語り伝えられない影の部分もあります。1967年2月には、地上試験におけるアポロ1号火災によって3名が亡くなっています(以前の記事)。詳細について当初明らかにされていませんでしたが、1967年4月にソユーズ1号(Soyuz 1)が打上げられましたが、地球帰還時にウラジーミル・コマロフ(Vladimir Komarov)が死亡する最初の宇宙飛行中における事故が起きています。

 現在もソユーズ宇宙船の改良型は国際宇宙ステーション(ISS: International Space Station)への人員輸送にて活用されています。開発当初はソ連による有人月飛行計画のためにソユーズ宇宙船は製作されました。今日までにソユーズ宇宙船は135機打上げられていますが、ソユーズ1号(1967年)及びソユーズ11号(1971年)の事故以降、46年間に渡って死亡事故は起きていません(2017年11月現在)。

 ソユーズ11号では、帰還時に気密が保持できなかったため、3名の宇宙飛行士全員が亡くなっています。人類初の船外活動(EVA:Extra-Vehicular Activity)を行ったアレクセイ・レオーノフ(Alexey Leonov)さんの回想記によると、着陸船の通気孔に対する自動開閉システムが誤作動することが判明しており、ソユーズ11号クルーへ自動開閉システムに頼らず手動で開閉するように念を押して説明していました。しかしながら、定められた手順には明記していませんでした。大気圏に入る前に通気孔が空いてしまい、船内の空気が希薄となり、着陸船の中でドブロボルスキイ(Dobrovolskiy)、バトサエフ(Patsayev)、ボルコフ(Volkov)は窒息死して発見されました。

 ソユーズ1号に戻って、名前の通りソユーズ宇宙船の有人飛行1回目となります。カガーリンが乗り込んだ宇宙船は、ヴォストーク(Vostok)と呼ばれる1人乗りの宇宙船です。ソユーズ宇宙船には3人までの宇宙飛行士が搭乗できるように設計されました。ソユーズ1号打上げに先立ち、ソユーズ宇宙船を無人で打上げて飛行試験が実施されていましたが、失敗していたことが明らかになっています。宇宙船の底部が焼けたため、着陸船内が減圧する異常が起きています。

 ソ連体制下で打上げ日は決まっており、打上げ延期を主張できる者は誰もいませんでした。改修が必要な宇宙船の欠陥が203箇所も存在しており、ソユーズ1号に対して全ての処置が済んでいたとは思えません。コマロフもソユーズ1号に搭乗すれば自らの命が危ないことは知っていた可能性があります。しかし、コマロフのバックアップはガガーリンであり、彼が飛ばなければガガーリンに危害が及ぶことを恐れていました。ガガーリンは、コマロフの代わりに自らが乗れば、打上げは延期されるかもしれないと期待を抱いて、打上げを妨害しようとしていました。

 1967年4月23日、コマロフを乗せたソユーズ1号は、バイコヌール(Baikonur)宇宙基地から打ち上げられました。やはり、ソユーズ1号は様々な不具合に遭遇しました。2つある太陽光パドルの1つが働かず、電力不足で誘導コンピュータが正常に稼働しませんでした。ソユーズ1号の姿勢を安定できず(宇宙では支えがないために致命的です)、コマロフは姿勢制御スラスタを手動で操作して機体の回転を止めようとしました。

 ミッションは中止され、地球へ帰還作業が開始されました。ソユーズの帰還カプセル(着陸船)は球状でなく釣鐘状の形をしており、底の面を下向きにしなければなりません。姿勢を十分調整することができず、大気圏に再突入が始まりました。電離層を通過する際のブラックアウト(Blackout)でコマロフとの交信が途絶えました。その後でも異常は続き、補助パラシュートは開きましたが、メインパラシュートは格納庫から引き出せませんでした。バックアップとして予備パラシュートが開くはずでしたが、コードが絡まって引き出せませんでした。

 落下速度を減速することもできずコマロフを乗せたカプセルは、隕石が落下するように、秒速25 mで地面に叩きつけられました。その衝撃で逆推進ロケットが爆破して燃え尽き、高さ2 mのカプセルは70 cmにつぶれた金属の塊に変わっていました。米国の国家安全保障局(NSA:National Security Agency)が、ソユーズ1号と地上管制間の無線交信を傍受していたことが明らかになっています。コマロフが再突入前に、コマロフの妻とも話ができました。話の最後のほうでは、彼は泣き崩れていたとのことです。

 世界の中で最も安全と評価され、安定的に宇宙飛行士を宇宙に送り届け、地球に帰還させてきたソユーズ宇宙船にも、そんな苦い経験を乗り越えてきました。1968年10月25日にソユーズ2号が無人で打ち上げられ、翌日にゲオルギ・ベレゴヴォイ(Georgy Beregovoy)が搭乗したソユーズ3号が打ち上げられました。ベレゴヴォイは、ソユーズ2号とドッキングはできませんでしたが1 mの距離までランデブー(Rendezvous)して、無事地球に帰還しました。

 

Our Soyuz MS-05 as seen from the Space Station

 

参考文献

  1. ガガーリン ----世界初の宇宙飛行士、伝説の裏側で
  2. アポロとソユーズ―米ソ宇宙飛行士が明かした開発レースの真実
  3. 宇宙への道 (1961年) (ポケット・ライブラリ)