チーム・マネジメント

チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

問題を解決するため、理論で考えぬく力を磨く【論理学】

 数学を通じて論理思考が強化されるはずですが、試験のために答えを導き出す力のみを鍛えています。しかしながら、社会には正解のある問題はありません。中学数学における証明問題で、「ゆえに」の意味で《 ∴ 》の記号、「なぜなら」の意味で《 ∵ 》の記号を用いて解答していましたが、振り返るとあまり使用する機会はありません。

 私の経験でも論理計算や論理記号が必要となったのは、計算機(コンピュータ)向けのプログラミングを組むようになってからです。基本として論理積(AND)「∧」や論理和(OR)「∨」があります。論理計算は2進数 真(1)又は偽(0)の世界である計算機(コンピュータ)の内部で実行されていることです。例えば、P∧Qが真(1)ならば「PとQがともに真(1)」となります。

 プログラミングを通じて論理思考を鍛えることができますが、プログラミングを体験しただけでは習得できないと思います。そして、思考法として学ぶには別に訓練が必要になります。論理学を体系的に組み立てたのは、古代ギリシアの哲学者 アリストテレス(紀元前前384年〜前322年)です。いわゆる三段論法として、大前提(Major Premise)・小前提(Minor Premise)および結論(Conclusion)から構成されます。有名な例として、「人間は死ぬ」(大前提)、「ソクラテスは人間である」(小前提)、故に「ソクラテスは死ぬ」(結論)との論理立てができます。

 前提となる事柄をもとにそこから確実に言える結論を導き出す推論法のことを演繹的推論(Deductive Inference)と呼んでいます。三段論法は演繹的推論の代表です。演繹的推論において、前提が正しいことが絶対となります。確実な事実はない時代であるとすれば、その前提が揺らぐことも考えられ、演繹的推論で導き出された結論は矛盾を抱えていることになります。そして、演繹的推論では前提の枠を超えるような新しい知識は創造できません。

 不変的な自然法則、社会共通の基盤となっている法律や判例ならば、公理としての大前提と見なすことはできます。大きな枠組みが決まっている範囲内での問題や推測は、演繹的推論は有効とも言えます。理論派で頭の切れる人は演繹的な考え方が素晴らしく思うかもしれませんが、現実では演繹的推論だけに頼ることは危険な気がします。

 それに対して、帰納的推論(Inductive Inference)は、前提となる公理から始めるよりは、事実を知ることを出発点とします。科学的なアプローチは帰納的推論の積み重ねと捉えることができます。帰納的推論とは、「多くの事実観察から一定の法則(ようなもの)を導き出す」という方法とも言えます。

 完全に正しい解はなく不確実性が高い状況において、演繹的推論では矛盾を抱えて結論を出せなくなるため、帰納的推論を選択すべきです。不十分な情報や信憑(ぴょう)性に疑わしい情報しかなかったとしても、帰納的推論から仮説を立てて、事実と照らし合わせて、仮説そして検証の過程を繰り返すことによって、仮説の精度を上げていくことができます。

 真実は観る者の視点によって様々な姿を見せます。自分が認識したことと他の人が捉えたことは異なってきます。先ほどの信憑性に低い事実も多視点から評価して、見方によっては真実が隠れているし、誰の視点でも間違っているとの結論を得られれば真実ではないでしょう。論理展開として弁証法(Dialectic)が上げられ、「正」である賛成意見を提示し、続いて「反」である反対意見をぶつける。その上で最終的な結論として「合」を得るやり方です。

 世界は全て論理だけで動いているわけではないですが、論理的な思考法を理解しているだけで、世界の見方は変わってきます。

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参考文献

  1. 統計学とは何か ―偶然を生かす (ちくま学芸文庫)
  2. 思考のチカラをつくる本: 判断力・先見力・知的生産力の高め方から、思考の整理、アイデアのつくり方まで (単行本)
  3. すべてを可能にする数学脳のつくり方
  4. 大人のための書く全技術