チーム・マネジメント

有人宇宙の運用管制から、チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

意見の違いや対立を乗り越えて 【ディスカッション】

外国人と英語による会議となると、日本人のように発言者の声に耳を傾け、参加者の発言は少ない、静かな会議にはなりません。参加者は積極的に発言して割り込んできて、時として議論が発散してしまいます。日本人の習慣として気をつけたい点として、特に欧米人には、無言ならば反論はなく、相手の意見に合意したと受け取られます。


2人以上集まればディスカッション(Discussion)が始まります。ディスカッションは日本で言う討論とは違い、形式張っていません。「話合いを通じて相互の理解を深め、相互の立場を尊重しながら共同で問題の解決にあたる民主的な生活技術(ブリタニカ国際大百科事典)」とありますが、日本の国会等の討論を振り返っても、一方的に原稿を読み上げるだけで、ヤジは飛んでも、議論が深まっていくようにはなりません。


ディスカッションの発祥地は、金融危機やユーロ離脱などに直面しているギリシャです。古代ギリシャ都市国家ポリスにおいて、市民生活の中心となっていた広場のことをアゴラ(AGORA)と呼んでいました。古代ギリシャでは、アゴラに人々が集まり、ディスカッションをした上で、物事を決め、それに基づいて政治が行われていました。


他国の人と開催する国際会議ではディスカッション形式は普通ですが、日本では習得できないため、積極的に国際会議に参加して、ディスカッションを身につけるしかありません。英語で自分の意見を主張するハードルは高いですが、流暢でなくても自分の言葉で伝える、中学レベルの英語で十分と思います。ただし、相手の意見を理解するためには、更なる英語力が必要となります

摩擦を恐れない「勇気」はもちろん必要な要素だが、それ以外にも、相手から有用な情報を巧みに引き出す「質問力」、相手の主張のよりどころとなるデータや事実の誤り、不足を見破る「聞く力」、確かな根拠とその組み合わせから新しい視点を提供できる「説く力」、それらすべてを兼ね備え、生産性の高い解を導き出せて、初めて「ディスカッションする力」があるといえる。 大前 研一

日本では相手の意見を尊重し、特に立場的に上位な人の意見に従って、組織の論理を優先させることが多いかもしれません。意見対立がなく同じ考えを持った集団が良さそうですが、集団に同調して深く考えない集団思考(Groupthink)となり、狭い認識で判断を間違えることが指摘されています。


チーム活動の中では、集団思考に囚われる危険性を認識して、メンバーから多様な意見やコメントが提出されるような環境作りが重要となってきます。特に現状を打破しなければならないならば、様々なアイデアを交換して混じり合い、チームとしての創造力を高めていかなければなりません。


チームには多様な考えを持ったメンバーが必要となりますが、エドワード・デボノが提言した6色の帽子が参考になります。チーム内での役割が6つに分けられると考え、6色の帽子で表しています。人それぞれに固有の強い色の帽子は決まってきますが、現状のメンバーに足りなければ意識して足りない帽子を被る必要があるのかもしれません。


  白い帽子は、現実を重視し、論理的な人。

  緑の帽子は、新しいアイデアを思いつくのが好きな人。

  赤い帽子は、直感で物事を決める人。

  青い帽子は、管理が得意で、プロセスを重視する人。

  黒い帽子は、穴を見つけ、ダメだしする「悪魔の代理人」。

  黄色い帽子は、和を重んじる人。


http://www.flickr.com/photos/14485539@N00/2219250356

photo by Sebastià Giralt


参考文献

  1. 「知の衰退」からいかに脱出するか?
  2. 即戦力の磨き方 (PHPビジネス新書)
  3. なぜ、「異論」のでない組織は間違うのか
  4. 未来を発明するためにいまできること スタンフォード大学 集中講義II