チーム・マネジメント

有人宇宙の運用管制から、チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

チームの利点である自由度や可変性を活かせるか? 【チーム構成】

 チーム構成は、自由度が高いため、様々な組織を組むことができます。その自由度・柔軟性がチームの特徴であり、目的を達成するために最も適した方法をも模索し、外部環境の変化にも応じて、チームは適応していく能力を持ちます。ただし、自らの組成力、その適応力を生かせなければ、一般的な階層組織に優る成果を発揮できない危険性もあります。
 チームを構成する要素として、①目標共有、②役割分担、③強固な人間関係があげられます。これらの特徴を維持するため、通常ではチームを構成するメンバー数は少人数になります。チームの規模が大きくなると、柔軟性や適応力が失われます。チームリーダーが指揮をしてチームを率いていますが、チームとして成果を上げることに注力していきます。
 ドラッカーはチーム構成として3種類のタイプを識別しています。(1) 野球型チーム、(2) サッカー型チーム、(3) テニスのダブルス型チームです。

 

(1) 野球型チーム
 野球の選手は、守備に着くポジション(投手、捕手、一塁手など)がほぼ固定されています。各メンバーが自分の役割を担って、チームの目標である勝利や優勝に貢献します。メンバーがそれぞれの持つ専門性や強みを活かして、徹底的に自らの役割を発揮して、すべてのメンバーが協力したときに初めて、チームとして成果をあげます。
 野球型チームに該当する組織として、オーケストラ、手術を行なう医療チーム、分業生産方式チームなどが挙げられます。野球型チームは、メンバー個人毎に明確な目標を持つ、その目標達成にともなう成果が分かりやすいです。柔軟性がないため、外部環境やルールが変化する状況下ではチームとしての力は半減してしまいます。
 野球型チームはシステムのように機能するため、システム設計のようにチームを組織して、機能するように運営する必要があります。そのチームを作り上げるのはマネージャ(監督、指揮者など)の役割になります。

 

(2) サッカー型チーム
 サッカー選手も野球選手のようにポジションを持ちます。ただし、チーム全体として整合を持って機動し、他のメンバーの動きに合わせてプレーしたり、状況に応じて他のメンバーのポジションや役割を担うことが求められます。
 サッカー型チームに該当する組織として、ジャズバンド、緊急医療チーム、コンカレントエンジニアリングチーム(企画・設計・製造を並列して進行)などが挙げられます。チームが機能するには「協働」を発揮できるように最も注力しなければなりません。
 サッカー型チームは、チームとして結束することが不可欠ですが、メンバーの役割責任があいまいとなって、チームとして分解しかねません。したがって、サッカーでいう戦術のような指針がなければなりません。

 

(3) テニスのダブルス型チーム
 テニスのダブルスでは、選手が固定したポジションを受け持つわけではなく、パートナーの強みや弱みに応じてカバーし合ってプレーしなければなりません。そのためには、ある程度の期間をかけてお互いの特徴や能力を理解して、チームとして向上するためにメンバーが多くの分野を修得する必要があります。
 ダブルス型チームには、救助隊チーム、匠(たくみ)集団などが挙げられます。訓練に長時間の期間がなければならないので、ダブルス型チームを組織するのは難しいです。

 

 少数先鋭のメンバーで構成されるならばダブルス型チームも組織できますが、一般的なチーム構成として野球型チームまたはサッカー型チームとなるでしょう。チームの利点である自由度や可変性を活かせるのはサッカー型チームとなりますが、チーム運営に求められるハードルが高いことを認識しておく必要があります。
 野球型チームからサッカー型チームへの移行は、初めからサッカー型チームを構築するよりも難しいかもしれません。徐々に移行することはできず、一度構築されたチーム構成をすべて壊して、最初からチームを造り直す必要があります。
 現代のように、変化の激しい時代では、柔軟性のないチームは生き残っていけなくなります。3つの型が持つ利点や欠点を理解した上で、チームビルディングを進めないとなりません。

 

Man of the Match

 

参考文献

  1. 実践するドラッカー【チーム編】
  2. 経営の真髄[下] (知識社会のマネジメント)
  3. 勝利のチームマネジメント サッカー日本代表監督から学ぶ組織開発・人材開発 (竹書房新書)
  4. 未来を発明するためにいまできること スタンフォード大学集中講義II

頼り切っている視力の限界を認識する【視覚】

 視覚からの情報は、知覚できる情報の80%を占めていると言われています。確かに、何か変な音を聞いたとしたら、視覚を通じて何が発生したか確認してしまいます。視覚を信頼しきっていますが、信じているよりも視覚は頼りないものなのかもしれません。

 視覚において重要な器官は眼です。人間は2つの眼球を持ち、成人の眼球は約24mmで10円玉くらいの大きさとなります。眼球は、外界の光を水晶体によって屈折させ、集積した光を網膜にある細胞によって形や色を認識します。脳は2つの眼からの映像をまとめて立体的に見ることができます。

 水晶体は透明度の高い弾力性のある組織でカメラのレンズのようであり、近くを見るときは水晶体を厚くし、遠くを見るときは薄く調整されます。加齢とともに、水晶体の弾力性が失われて固くなり、近くを見るのに必要な厚さにならないのが老眼です。近年では、スマホやパソコンなどの画面を長時間見ることで眼を酷使することで、眼のピント調整力が低下し、夕方頃になると老眼と同じような症状になるスマホ老眼に注意が必要です。

 網膜には錐体(すいたい)と桿体(かんたい)という2つの細胞があるとのことです。錐体細胞は中心窩(ちゅうしんか)に集中していて、視力や色の識別に優れています。桿体細胞は周辺部に多く、視力は低く、色も識別できませんが、動くものに対して感度がいい特徴があります。視野として左右180度、上下130度くらいの広い範囲となりますが、中心窩の大きさは直径1 mm程度で5 mから離れて見る切手の大きさくらいしかよく見えません。

 しかし、私たちが見ている(と思っている)映像は鮮明です。中心窩の小ささを補うため、無意識に眼球を左右そして上下と動いており、そのような不安定で常に動いている二次元映像を脳が統合して、視覚として鮮明な三次元映像を描いています。

 この視覚も完全ではありません。例えば、網膜には光を感知する細胞がない部分すなわち盲点があります。外方約15度(左目ならば左15度)の視点が見えていません。盲点を確かめるには、紙に×を描き、×から若干離して●を描き、片目で×を見ながら紙を前後に動かすと●が消える距離があります。見えていませんが、盲点に対応する視野は不自然に黒くならず、盲点周辺の情報によって補完されて気づきません。この補完機能によって、眼の病気で一部視野を失っても気づかないこともあるそうです。

 脳の障害によって視覚を失ったとしても、眼の機能は生きています。実証された事例として、視覚障害者が、障害物が散らかった部屋を歩いてもらったところ、支えなしに障害物を避けて歩くことができたとのことです。私たちは、光を知覚する器官として眼に注目してしまいますが、眼のみでなく皮膚なども光を感知することができます。

 視覚は、変化を敏感に反応して、見逃さないようにしています。しかし、あまりにも表示期間が短い映像は認識されないことが分かっています。多くの実験において、0.04秒間に表示された映像は認識できないが、0.06秒になると認識できるようになります。識閾(しきいき、意識が出現または消失する境界を指す)下であることをサブリミナル(subliminal)と呼んでいます。1秒間30フレームで構成された動画の場合、1つの映像は0.033秒間表示されます。1フレームだと認識できず、2フレーム以上継続されると認識されることになります。識閾下の広告を繰り返して流すことで購買欲を高める方法をサブリミナル広告と呼んでいます。有効性は不明ですが、使用は禁止されています。

 視覚と聴覚による錯覚として「マガーク効果」と呼ばれる事象があります。視覚上で話している人の口の動きは「ガ」であるにもかかわらず、聴覚上では「バ」という音声を受け取ります。視聴者の脳は矛盾に直面します。そして脳は、二つの情報を融合することで無意識のうちにこの矛盾を解消します。二つの感覚入力が十分に同期していると、脳はそれらを一つの中間的な知覚表象、すなわち聴覚入力の「バ」と視覚入力の「ガ」の折衷音「ダ」と認識します。

 視覚は、眼の機能(視力)のみではなく、脳も鍛えることによって、強くなってきます。視力は6歳頃までに完成して、視覚は小学生の頃に急速に発達します。視覚は、20歳頃に最も良くなり、その後は30歳頃から次第に低下します。高齢者の視覚は若者の2/3ぐらいまで落ちるとの報告もあります。子供の頃に視覚を鍛えず、テレビやスマホなどで視力を落としてしまっては、見ることは全ての基本ですから生涯に渡って苦労することになります。

 

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Credit: NASA


参考文献

  1. スポーツ選手なら知っておきたい「眼」のこと
  2. 意識と脳――思考はいかにコード化されるか
  3. しらずしらず――あなたの9割を支配する「無意識」を科学する
  4. キュレーション 知と感性を揺さぶる力 (集英社新書)

 

 

質問する意義について問う 【質問する力】

 日本における教育の弊害として、試験やテストでは正解がある質問が取り扱われます。採点でも〇または×が明確になっています。一歩でも社会に出れば、答えが明確な問題などありません。白と黒で色をつけるとすれば、全ての回答(決断)はグレーであり、限りなく白に近いグレー、限となく黒に近いグレーとなります。
 チーム活動において、質問することの重要性を認識するようになりました。と言っても、テストで出題される質問形式ではありません。メンバーとコミュニケーションを取るにも、ただ自分の考えを述べるだけでは不十分であり、言葉のキャッチボールが必要となります。促進するための鍵となるのが質問することです。


 質問による力を見直してみます。人間は質問されると、意識しているかに関わらず、考え始めて、答えを見つけ出します。質問を受けて脳活動が活発になることも知られています。すなわち、質問によって相手を動かすことができます。ここで相手を動かすと言っても、こちらが望んだ通りに動いてくれる訳でなく、相手を強制的に考えさせるだけです。質問は相手に負荷をかけることになるので、質問を続けて追求してばかりでは相手から拒絶されるかもしれません。


 質問のタイプとして、はい(Yes)、いいえ(No)で回答できる単純質問があります。事実を明らかにするためには良いかもしれません。質問されたほうも深く考えずに回答ができるため、相手に負担を与えません。二者択一の質問も同様かもしれません。その反面、質問をしてもお互いの発想が広がっていきません。
 二者択一から正解を出す、例えばいろいろ議論をして一つの案を選択する。一見して正しい決定のように見えます。その前に、二つの案についての矛盾を質問して、発想を広げ、第三の案を見出すことも求められます。質問には基本的に5W1H("いくら(How much)"を追加した5W2Hも提唱されています)で表されます。その中で、なぜ(Why)は本質に迫る質問として重要です。(以前の記事


 質問者の姿勢に基づくタイプの違いもあります。質問する上で注意しておくべきことは、ポジティブ(Positive)質問とネガティブ(Negative)質問です。ポジティブ質問は現状を肯定して相手を誘導する質問、ネガティブ質問は現状を否定して相手を誘導する質問となります。ネガティブ質問で、相手を追い込んでしまえば、相手と精神的な壁ができ、負の感情に基づいて相手は答えることになります。好意の返報性に基づいて、自分に好意を持ってもらうには、相手に好意を持つことが必要です。ポジティブ質問に心がけ、少しの言い回しの違いが質問力を大きく左右します。


 質問の目的として、相手を理解し、自らが置かれた状況や環境を理解し、そして省みて自分を理解するためです。すなわち、質問力は人間関係の構築において基礎となる力となります。電子メールやSNSを通じて、逐次質問していてはトラフィック量が多くなるだけで、質問力は活かすことはできないです。雑談、面談、ミーティングの場において質問力は発揮されます。
 質問によって、相手を説得し、相手の行動を修正していくことが行われています。物理学の作用・反作用ではないですが、人に何かを押しつけようとすると、同じ力で反抗しようとすることがあります。その特性を認識して、質問の仕方によって、命令する形ではなく、相手から自らの行動を選択させるようにできます。


 何気なく活用している質問力を体系的にまとめておきたいのでいろいろと整理してきました。単純と思える質問ですが、調べてみると奥が深いです。実務に活用していきます。

 

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Credit: NASA

 

参考文献

  1. ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則
  2. 社長の質問力 ―社員が勝手に動き出す
  3. 最強の質問力―未知の能力を引き出し合う究極の思考法
  4. 人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)
  5. できる営業マンの「質問力」入門
  6. 質問力―論理的に「考える」ためのトレーニング (日経ビジネス人文庫 (い5-2))