チーム・マネジメント

有人宇宙の運用管制から、チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

人間が生存する意義 【Human Factors】

組織とは、法律上の擬制である。組織そのものは、何も計画できず、何も決定できず、何も行動できない。計画し、決定し、行動するのは、一人ひとりの人間である。  ピーター・ドラッカー
高度に科学技術が発達し、情報が瞬時に世界中を駆けまわり、国家やグローバル企業などの組織が巨大化している現代において、人間が組織やシステムに取り込まれ、人間の存在意義が小さくなってきた感もあります。また、社会全般で自動化が進み、一部では機械が人間から置き換わり、毎日の生活において機械(テレビ、クルマ、コンピュータ、スマートフォン等)を相手にしている気もします。
 
オートメーション化が進んで無人工場が登場し、クルマの自動走行が技術的には可能な段階となり、買えるものならば画面をタッチすれば直ぐに手に入り、ドローン(Drone)と呼ばれる無人航空機が偵察機・対人攻撃機に代わって飛び回っています。人間を必要としない世界を想像すると背筋が凍るような思いがします。
 
現代では、効率化の名の下で機械化が進むもの、人間でなければならないことに二分化が進んでいるとも捉えられます。人間に残されるのは何でしょうか?
  • 責任 …… 自動走行できるクルマが事故を起こした場合、誰の責任でしょうか? 所有者であるのか? メーカーであるのか? 最終的に責任を負うのは人間ということになります。
  • 意思決定 …… 確実の情報があり、ルールが決まっていれば、コンピュータでも判断できます。しかし、現実には不確実の中でリスクを取って意思決定をすることが求められます。
  • 問題解決力 …… 定型化された手法やこれまでの経験の延長では袋小路に入ってしまった問題、予想されなかった未知な問題に対して、創造力(Creativity, Innovation)を発揮して解決していくことが求められます
  • 適応力 …… 我々が生きている地球環境も徐々に変化し、予想しない自然災害が起き、ニュースでも話題になっているように社会情勢も刻々と変わってきています。人間は、激動をも超え、柔軟に適応してきました。

航空宇宙の分野において、人間は航空機なしで空を飛ぶことができず、人間は宇宙船なしで真空空間の中で生存することも許されません。そのため、初期の頃から航空・宇宙システムの中に人間が置かれてきましたが、様々な問題や事故が起こっています。それを解決すべく、ヒューマン・ファクターズ(Human Factors)の研究が進められてきました。
 
ヒューマン・ファクターズ(人間工学 Ergonomicsとも呼ばれる)とは、「人間と他のシステム要素における相互作用について理解を深めるための科学的研究であり、人間にとって好ましくかつシステムの総合的性能を最良化するための理論、原理、設計データ及び手法を応用する専門分野である」と定義されます。International Ergonomics Association
 
本プログでは、ヒューマン・ファクターズに関わるトピックスも取り上げていきます。
 
参考文献
 
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Credit:NASA