チーム・マネジメント

チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

現代のシステムに必要なリソースは? 生命維持には? 【電力】

 自然を満喫するためにキャンプに出かけようとして何を携帯していきますか? せっかくオフラインになれる機会ですが、スマートフォンを家に置いておくことはないかもしれません。電池性能も向上して、充電切れをあまり気にしなくても良くなりました。そして、スマートフォンから先には様々なシステムと接続されています。通話をするにも、無線回線に接続され、交換機を通じで世界とつながり、音声データを交換します。音声認識以前の記事)では、サービスを提供するサーバへ音声データを送付し、該当率が高い文字列が返ってきます。クラウドサービスを使用していれば必要なデータやファイルにいつでもアクセスできます。

 

 キャンプ経験がある人ならば電気が無くても生活ができることを知っています。日が暮れる前に、寝る場所を確保するためにテントを張り、火を起こして薪に火を移して、夕飯の調理を始めます。寒い夜でも、焚火を囲んで作り立ての暖かい食事をいただき、少しお酒があればほろ酔い気分です。満天の星空の下で星との対話ができれば更に最高です。まさに古代の人々の生活です。そのため、薪や木炭などの熱源の入手し、スイッチでオン・オフできる電気やガスコンロと違って火の番を続けなければなりません。現代のキャンプ場には、電灯があり、コンセントから電気が取れ、温泉やシャワー室が常備され、携帯の電波も届いて快適です。

 人間は電気がなくても生きていけますが、現代の便利さを享受するためには電気が必要となります。東日本大震災(2011年 3月 11日)において、福島第一原子力発電所の事故もあり、大規模停電そして計画停電が起きました。まだ寒い日が続き、電気以外の暖炉が求められ、ガスコンロ等で調理をする必要がありました。様々な電化製品が使用できなくなり、特に記憶にあるのは水洗トイレが止まり、自動で水が流れず、水を酌んで便器に流さなければなりませんでした。日本の電源構成は、震災前は原子力が30%を占めていましたが、2014年には一度ゼロとなり、LNG (Liquefied Natural Gas: 液化天然ガス)の割合が増えてきました。水力、地熱及び新エネルギー(太陽光、風力を含む)の割合は、2010年の9.7%から2015年には14.3%に増加してきています。

 

 地球上において、生命そして人間は電気なしでも生き抜いてこれました。人類が電気を使い始めたのはそんなに昔ではありません。地球から出てみれば、超真空である宇宙空間で生き抜くには、宇宙船が必要であり、宇宙船は電力がなければ動けません。アポロ13号事故(以前の記事)で印象的な言葉に"Power is everything.(電力が全て)"との名言があります。宇宙船を動かすにも電力がなければ何もできません。宇宙飛行士を地球へ帰還させるため、生命維持を最低限にして船内が低温になるまで、節電しなければなりませんでした。宇宙では電力の枯渇が直ぐに死に繋がります。アポロ時代には原子力電池(RTG: Radioisotope Thermoelectric Generator)も使用できましたが、今日では燃料電池(Fuel Cell)や太陽光発電(Photovoltaic Power Generation)・蓄電池(Storage Battery)が必須となります。

 電力系統に異常が発生すれば、大規模な事故に発展しかねません。アポロ13号事故、福島第一原子力発電所の事故も電力喪失が波及しました。1963年にパンアメリカン航空214便が落雷を受けて墜落した事故も起きています。電力系統に異常が発生した場合、宇宙飛行士は船内の照明が消えていたことによって、故障箇所を特定できるように訓練を受けています。早急に別の電力系統から必須な機器(Critical Components)の給電を切り替えることによって、大規模な事故に発展することを防止できます。

 

 電気とは何でしょうか? 電流(Electricity)は正極(プラスは和製英語。英語ではpositive)から負極(マイナスは和製英語。英語ではnegative)へ流れることを教わります。実際には電子(Electron)が負極から正極へ流れていきます。通常の電力系設計では電線上に電気が流れるようにしています。一般のコンセント(和製英語。英語はoutlet, socket)では、二つの差し込み口があり、右から出て左から戻るように流れます(家庭用は交流であるため、流れる方向は周期的に変わります)。自動車では、負極を車体に接続して、正極から電線を通って流れて車体を通じて戻ってきます。電線は一本で良いことになります。飛行機や宇宙機の電気設計では、正極から電線を通って負荷に給電して、必ず電線を通って負極へ戻す設計となっています(電線は二本必要)。

 電線の途中が損傷を受けて漏電が生じていると、人間は感電して、体の一部に電気が流れて衝撃を受けます。最悪な場合として電流が心臓を通過すると心停止などで死亡、電流の流出入部の皮膚が剥離したり、末梢神経が破壊されることもあります。電気事故を防止するため、使用する電力の大きさに応じて電線の太さを決めたり、漏電(leak)や短絡(short)を防ぐために回路遮断器が設置されます。回路遮断器として、ひと昔前ならば過大な電流が流れると溶けて破断するヒューズ(fuse)が用いられていました。そのため、切れたヒューズは交換しなければなりませんでした。ブレーカー(breaker)ならば規定以上の電流が流れるとスイッチを切られます。短絡ならば、ブレーカーが飛んだとしても瞬間的に回路へ大きなエネルギーが付加され、破壊される可能性もあります。焼き付いて火災が発生しているかもしれません。

 電源ケーブルを抜き差しする場合も安全を確保する必要があります。ハザード制御(以前の記事)において感電もハザードの一つとして識別され、感電を封じ込めなければなりません。クルーの人命に影響が及ぶため、2故障許容(TFT: Two-Fault Tolerant)の手法が取られます。2つの故障が起きても事故に波及しないように、3重の防護柵を設けます。単純にはケーブルを抜き差しする上流に独立した3つのスイッチをオフします。実際には、先ず設計において電力供給(上流)側をソケットにします。家庭用コンセントのようにピン等が出ていなければ、接触によってショートが起きることはありません。2つ目はもし電流が流れても人が感電しない電力レベルに抑えます。最後の砦は上流のスイッチをオフとします。一般的には1故障許容かもしれません。いちいちブレーカーをオフにしてから電源ケーブルを抜き差ししていません。

 

 機械と生命の違いは電力の面から考察しても明らかです。機械が故障したり、暴走したならば、迷わずに電源を切ります。電力が断たれれば機械は停止します。コンピュータが動かなくなったり、異常を示せば、一度電源を切って再起動を図ります。機械がどのような人を超えた動きをし、複雑の処理が行えたとしても、機械を動かすか、止めるかは人の判断によります。暴走した機械が電源を遮断されないために人間と戦うというとSFの世界です。プロ棋士に勝ったアルファ碁が一対戦で使用する電気代は数百万円になるとの試算もあります。それに対してプロ棋士は数千円のお弁当でしょうか。

 日常の生活にこれだけ機械が導入され、システムとして組み込まれてしまえば、システムが停止すれば混乱がさけられないです。システムの安全装置が故障すれば被害が拡大することは間違いありません。福島第一原発事故の教訓も踏まえて、どんな事態に至っても非常用電源の確保は不可欠です。停電などで商業用電源が失われても、最低限の機能は維持できるように自家発用電源・非常用蓄電器の整備も必要かもしれません。

 その反面として、電力供給が不安定となっていても生存できる環境を整え、人間の能力を取り戻すことも重要かもしれません。シェールガス(Shale Gas)が産出できる技術革新を伴ってアメリカが最大の産油国となり、原油価格も低下したままとなっています。エネルギー供給も有り余っている印象があります。しかしながら、今日のように大量の化石燃料を採掘し続けることができるか疑いを抱きます。自然エネルギーの供給が増加しなければ、化石燃料の価格高騰、電気料金の急上昇そして電力供給量が激減することになります。

 

 ネットワークに常時接続されている人間が理想ではないと思います。電気がない生活というと難しく考えてしまいますが、たまには完全にオフラインとなってキャンプへ行ってみれば、もしもの時の生活技術を習得できるかもしれません。

 

Solar-powered plane went round the world flight