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チーム・マネジメント

チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

環境が訴えていることを気付いているか 【アフォーダンス】

人間が外部環境を認識するに当たり、アフォーダンス(Affordance)との捉え方があります。通常の認識論では、人間が環境を認識する場合、視覚等を通じて環境からの刺激を感受して、その本質や意味を理解します。主体が人間であり、客体が環境にあることになっていますが、その捉え方で正しいのでしょうか?

アフォーダンスを提唱した心理学者ギブソン(James J. Gibson)は、第二次世界大戦中に航空機パイロットの選抜と訓練に携わっていました。パイロットが外部環境から飛行状態をどのように認識するのかを研究していました。アフォーダンスは、Afford(提供する、利用可能にする)から由来しています。人間が感受するかを問わず、環境はそもそも特徴的な意味を持って存在しています。アフォーダンスとは、環境が人間の行動を引き出そうと提供している意味や機能を示しています。

アフォーダンスの例として、平地に膝の高さくらいの石や切り株があったら、人が座るところとしての機能があります。葉が生い茂った大きな木があったら、炎天下ならば日陰、雨の日には雨宿りの場所となるでしょう。他の動物が食べている果樹ならば食べられるという属性を持っています。人工物ならば、ドアについたノブは回せばドアが開けられることを示しています。電気スイッチがあれば押すことによって電灯が点灯します。特に説明書きは必要ないでしょう。

現代では自然だけでなく、人工的な環境も含まれるかもしれませんが、我々はアフォーダンスに囲まれており、それを認識し、行動しながら生きています。都会的で快適な生活環境では、アフォーダンスを認識する能力は退化しているのかもしれません。食料についても、商品名、産地や賞味期限などの情報をもとにスーパーマーケット等から購入して調理しています。食べられるか、毒であるのかを見分けたり、腐っていないかを匂いや味では判断できなくなっています。

人間も含む動物は、自らが動き回ることによって、環境への認識力を高めていきます。アハ体験として自らの認識力を疑ってしまいますが、ゆっくり変化するとその変化を認識できなくなっています。自らが動くことによって、環境からの光や音が刻々と変化して感度を高めることができます。アフォーダンスを抽出するためには、能動的に環境を検索して、理解していかなければなりません。我々が気付いていないことがまだあるかもしれません。

視覚によって環境を知覚するため、ギブソンは「光学的配列」にて説明しています。目の前に青い海が広がっているとします。実際には海が青いわけではなく、太陽からの光のうち、赤などの波長の長い光は吸収又は海底へ透過して、青い光だけを反射しているために青く見えています。光源を持たない多くのものは光を反射しているだけです。

光線は透明な媒質である空気の中を伝搬し、物体に突き当たると、その表面から反射されます。様々な反射光が重なり合って束になり、私たちは視覚で像として捉えています。観測者が場所を移動すれば、反射光の束も異なり、描く像も変わってきます。そして、反射光が同じパターンならばその部分を面として認識できます。移動しても、変化の少ない部分を背景や景色として認識して、変化が大きい部分を対象物として認識します。

機械学習によって大量の画像からパターン認識を修得したコンピュータが、画像に映っている対象が猫であることを識別できるようになりました。人間が視覚によって外部環境を認識することは、カメラで撮影した画像を解析によって対象を識別するほど単純ではないです。そして、コンピュータ・ネットワークの仮想空間では、アフォーダンスを認識することは困難です。

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Credit: NASA

参考文献