チーム・マネジメント

有人宇宙の運用管制から、チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

チームを成長させるのは何か 【ビジョン】

チーム構成の仕方も変化してきています。以前は目標が定まってチームが構成されれば、目標達成までその構成が維持されてきました。メンバーに欠員がでた時に補充するくらいでしょうか。それなりに長い期間(数年間)チームを組んでいれば、会話を交わさなくてもメンバーの行動から意図が読み取れます。

 

変化の激しい環境において、時々刻々とチーム構成が変更されたり、頻繁にメンバーの入れ替わるのが通常になってきています。メンバーの引き抜きや離脱は日常茶飯事になりつつあります。シフト体制を取っている業務ならば、シフト毎に当直メンバーが入れ替わり、その時限りでチームが組織されます。

 

短期的な目標に向かっていくならば、変動が激しいチーム構成が適しているかもしれませんが、長期的な視野に立った場合には弊害となるかもしれません。その点を理解した上で、長期目標にも対応できるようにチームを育成しなければなりません。

 

日々、目の前にある仕事に忙殺されて、未来に向けた活動に十分時間が取れません。しかし置かれた環境は刻々と変化しており、ふと気が付いてみれば時代遅れとなってしまいます。人間の特徴なのかもしれませんが、急激な変化ならば即時反応しますが、刻々と徐々に進行する変化には対応せず、いわゆる「ゆでガエルの運命」と同じ道をたどることになります。

 

環境の変動を受け、長期目標を達成するため、メンバーには日々学習する能力が求められているのかもしれません。チームとして学習する仕組みが必要となります。そのためにも、チームが目指すべき将来像として「ビジョン(Vision)」を掲げることが重要であり、それを伝えて共有することがリーダーに求められていることかもしれません。

 

チームがどのようなハードルを達成し、何を具体化するのか、社会はどんな風になるのか、人々に何をもたらすのかを共通のビジョンとして持っていれば、チームメンバーはそのビジョンに向けて、自ら考えて行動し、まだ至らない能力があるならば学習によって習得し、チーム活動に貢献していきます。

 

同じ意味で用いられることもありますが、目標(Objective)とビジョン(Vision)は明らかに異なることを理解しておいたほうが良いかもしれません。目標は成し遂げることであり、ビジョンは将来あるべき姿を示しています。目標を設定する場合、特に成果主義では実現可能な範囲で選択することになります。ビジョンは、直ぐに達成できる目標でも、永遠に求めるべき理想でも掲げることができます。

 

チームを成長させるには、高いビジョンを掲げるべきでしょう。一度ビジョンを下げてしまえば、落ちるところまで低下していき、目の前で達成すべき目標になってしまいます。そうなれば、現状を維持することも困難になり、前に進んでいく推進力も失われ、失速して墜落することを間逃れません。

 

vision

 

参考文献

 

  1. チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ
  2. 学習する組織――システム思考で未来を創造する
  3. チームの力: 構造構成主義による”新”組織論 (ちくま新書)