チーム・マネジメント

チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

意志に従って行動していると思い込み 【無意識】

人間の情報処理能力をコンピュータと対比させて説明しました(以前の記事 人間の情報処理能力 【コンピュータとの違い】 - チーム・マネジメント)。人間の感覚器に入ってくる情報量を総合すると毎秒10億ビットにもなりますが、人間が意識して考えられるのは毎秒100ビットほどです。この情報量の差をどのように理解すれば良いのでしょうか?

毎秒10億ビットもの情報を全て意識で処理しようとすれば、人間の能力を大幅に向上しなければならないですし、意識で考えて行動に移すまで大幅に遅れて、人類誕生当初ならば生命の危機に見舞われていたでしょう。人間は脳での情報処理を環境に適応させて進化してきました。我々は意識によって全て判断していると思い込んでいますが、実は無意識の影響が大きいです。

例えば、走る動作を考えても、意識では走れと思いますが、実際にどの筋肉をどのように収縮して、体の姿勢をどのように変化させて重心を移動させ、次に逆の足を動かしてなど、1つ1つの動作を細かく意識して指示をしているわけではありません。これまでに取得した動作を無意識で繰り返しています。

反射反応でも言えますが、手がストーブなどの高温の熱源に触れたならば瞬時に引込めます。意識で判断して、何か熱いな、どのくらいの温度だろう、火傷しそうだ、まずい手をどかさないと、触れないように腕の筋肉を動かして、などとやっていたら重症の火傷となってしまいます。

我々は意識していないですが、毎秒10億ビットに及ぶ情報の大部分を無意識で処理しています。そして、無意識に処理・反応しています。それが人間が備える特徴であり、コンピュータやロボットと異なる強みでもあります。これまで大部分のコンピュータやロボットは、プログラミングによって明確に処理内容が決められたことしか実施できません。逆に、人間が意図しないで(プログラミング・ミスではなく)ロボットが稼働したら怖いような気がします。

無意識を持つことの有効性として、身体の細かな動き、視覚をイメージとして統合、言葉と雑音の区別などを意識下で処理することによって、人間の意識を集中したい事柄や思索に向けることができます。例えば、自動車を運転しながら別に考え事をしていたとしても、事故にも遭わず目的地に向かって進んでいます。運転中ふっと気づくと、いつの間にか交差点を通り過ぎていたと認識したりします。外国語の会話では、無意識のフィルタリングが十分機能せず、重要でないことも相手の話を集中して聞き、意識内で全て処理しようとしてパンクすることになります。

無意識について注意しなければならないのは、意識していなければ無意識が機械的に対応することがあります。特に人間関係で問題が起きるのは、他人の無意識から送られるヒントを受けて、自分の無意識がそれに反応しています。無意識の間でネットワークが築かれています。

日頃は人前で意識が高くしっかりした対応を取ります。しかし、気が緩んで意識が低くなったり、プレッシャーで他のことで意識が一杯になると、無意識が反応して普段は隠れている考えや態度、本音が表面に現れてきます。その後で我に返り、先ほどは何でそんなことを言ったんだろうと戸惑います。

人間が持つ無意識の特性が、コンピュータには真似ができない優位性を築いてきたとも言えます。しかしながら情報通信技術の発達に伴って、膨大の情報を蓄積して統計的な処理をしたり、クラウド環境でネットワークに繋がることによって端末(例、スマートフォンタブレット)は少ない資源(計算能力、メモリなど)でも多様なことができるようになっています。

そして、機械学習または弱い人工知能を活用して、オンライン翻訳、音声認識、ディープラーニング(Deep Learning)、IBMワトソン(Watson)のようなコグニティブ・コンピューティング(Cognitive Computing)*などが開発されています。正に人間の無意識に似た働きを導入し、人間の優位性が小さくなってくるのかもしれません。

*:「コグニティブ・コンピューティング」とは、コンピュータが自ら学習し、考え、瞬時に膨大な様々な情報源から大量のデータを統合し分析できるシステムを示します。


参考文献