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チーム・マネジメント

チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

ノイズに囲まれた社会の中で 【S/N】

情報通信 システムエンジニアリング

情報を送信側から受信側へ伝送しますが、有意味の情報のことをシグナル (Signal)と呼んでいます。そして、伝送の過程においてノイズ(Noise)も乗ってきて受信側へ伝わっていきます。受信した情報には、有意味なシグナル、無意味なノイズ が含まれます。シグナルの量とノイズの量を比較した値をS/N(Sinal to Noise Ratio)と呼んでいます。

S/Nが大きければ、シグナルの割合が多く、ノイズの割合が少ないことを意味していますので、有意味の情報を取得することが容易となります。S/Nが小さくても、ノイズの特性が分かっていれば、ノイズを取り除くフィルタを通すことによって、シグナルを抽出することが可能です。

ノイズも様々なタイプがありますが、周波数スペクトル分布が一様なノイズを白色ノイズ(White Noise)と呼んでいます。広範囲の周波数成分を持つ光が白色に見えることから名前が付いています。それに対して、特定な特徴(周波数)を持つものは有色ノイズ(Colored Noise)とも呼ばれます。

通常はS/Nが大きい通信方法が望まれると思いますが、通信技術として逆にシグナルのレベルを低くして送信することもあります。直接拡散方式(Direct Sequence Spread Spectrum)と呼ばれ、シグナルを広い帯域に拡散して送る方法です。ノイズのレベルが高くなるため、シグナルを識別することが困難で、秘匿性が高めることができます。

直接拡散方式では、シグナルを広い帯域に拡散するため、「拡散符号」と呼ばれる鍵を用いて演算処理がなされます。受信した拡散した信号から同じ「拡散符号」を用いて演算することによって、シグナルを復調できます。一世代前の携帯電話では、CDMA方式が直接拡散方式を用いていました。カーナビでも使用されるGPSの電波も拡散されており、一般に開放されている拡散符号Pコードによってナビ情報を取得できます。軍事用で使用される拡散符号C/Aコードを知っていれば高精度なナビ情報も得られます。有事の際には、Pコードによるナビ情報には故意に精度が落とされる可能性があります。

S/Nは無線通信において用いられる用語でしたが、インターネットを含む情報通信技術、情報伝達(プレゼンテーションなど)においても用いられるようになってきました。

現代ではデータや情報の洪水に伴い、シグナルとノイズの見分けも難しく、大部分はノイズに識別されています。シグナル&ノイズの著者 ネイト・シルバーが指摘しているように、あまりにも多くの情報を手にすると、本能的に気に入ったものを選び、それ以外は無視する道を選ぶことになります。自分に都合のいいように解釈し、客観的な事実から離れていく危険もあります。

そのためか近年は、プレゼンテーションのスライド作成において情報量を減らす傾向にあります。スピーチならば、1スライドにつき、数キーワードのみ記載することになってきました。情報量を少なくすると、スライドだけでは内容のない資料ができてしまいます。

ネット検索のランキングを意図的に操作するために検索エンジン最適化(SEO: Search Engine Optimization)として無駄なデータやページが作成されたり、ネット上に漏えい情報を発見しずらくするためにコンテンツ・ファーム(無意味なコンテンツを大量生産するウェブ・サイト)から膨大なスパム情報が流されています。

ノイズが圧倒的に多いビッグデータの時代で、キーワード検索だけで有用なシグナル情報を取り出すことは困難な時期に来たのかもしれません。それを受けて、弱い人工知能(AI:Artificial Intelligence)技術を用いて、ディープラーニングなどでデータのパターンを機械学習して有用なシグナル情報を取り出すことが進められています。

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Credit: NASA

参考文献