チーム・マネジメント

有人宇宙の運用管制から、チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

情熱を秘めて、目標を実現させる力 【モチベーション】

仕事、スポーツ、そして勉学においても、モチベーション(Motivation)が重要視されることが多くなってきました。モチベーションが高ければ、強い動機づけを受け、物事を行う意欲が高まります。しかし、常時高く維持するのは困難であり、低下している時には何をしても上向きにならないこともあります。モチベーションは、個人の内面で引き起こされるものであり、他人はどうにもできない特徴があります。

モチベーションの高さとヒューマンエラーの多さの間に反比例の関係があることが指摘されています。やる気がなかったり、嫌々ながら行えば、うっかりミス、不注意(careless)ミスが多くなることが当然予想されます。エラーやミスが、信頼を低下させ、安全を損なうことに繋がるため、チームにおいてモチベーションを維持することを忘れてはなりません。しかしながら、自分自身を振り返ってみても、モチベーションが上がったり、下がったりの毎日です。

古いマネージメント手法では、報酬(賃金など)を上げれば、労働者の意欲も高まり、効率が高まって成果も向上するという原理(逆に成果が上がらなければ報酬は下げる)が信じられていました。この原理は正しいでしょうか? 論理的に考えると正しそうですが、実情はその通りになっているでしょか?

心理学者 デシが提言して実験で確認した内容は、反対の結果を示していました。「ある活動に対する外的な報酬として金銭が用いられる場合、被験者はその活動自体に本心からの興味を失う」との結論に達しています。すなわち、モチベーションは下がることになります。

確かに報酬によって短期間にやる気を起こさせることはできます。ただし、報酬が仕事の範囲を定めることになり、定められた仕事以上の成果については、追加の報酬がなければ意欲はなくなります。そして、報酬を受け取る仕事は決まりきった退屈な仕事に変わり、積極的に改善したり、更なる向上に繋がる努力をしなくなります。そのような成果主義の問題点が明らかになってきました。

報酬に関する洞察として興味深いのは、心理学者 ハーズバーグが二要因理論において提唱し、仕事において少しでも欠ければ不満につながる要因を衛生要因(Hygiene Factor)と呼んでいます。それに相反する要因は、モチベーションをもたらす動機付け要因(Motivation Factor)です。衛生要因には、社会的地位、報酬、職の安定、作業条件、企業方針、管理方法などが当たるそうです。注目すべき点は、報酬は、衛生要因に識別されており、人が不満を感じる要因になります。

動機付け要因を理解するため、よく知られている心理学者 マズローが提唱した欲求段階説から考えてみます。マズローは、人間の欲求を5つに分類して、最下位の①生理的欲求、②安全・安定の欲求、③社会的欲求(所属と愛の欲求)、④承認の欲求(自我・自尊の欲求)、最上位の⑤自己実現欲求から構成されると考えました。最下位から段階的に上位に向けて満たされていきます。

モチベーションに関わる段階として、④承認の欲求と⑤自己実現欲求になると思います。承認の欲求としては、周囲から認められ、達成感や技能を身につけることです。外部からモチベーションを高めるには、能力、成果や前向き姿勢に対して承認してあげることが考えられます。自己実現欲求としては、自分の能力を高め、大きな目標を実現したいと思うことです。この場合、モチベーションは内部から湧き上がるものであり、目標の設定を手伝ってあげたり、実現するためのアドバイスを通じて、間接的にモチベーション向上や維持に関わることができます。

新しい見知を説明してきましたが、チームのモチベーション向上に役立てば幸いです。


参考文献