チーム・マネジメント

チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

記憶のメカニズムを理解する (後半) 【長期記憶】

長期記憶の特徴として、人間は時間経過とともに記憶が忘却していくことがあります。機械ならば一度データを外部記憶装置(HDD、SSD等)に記憶させれば、故障がない限り、データ欠損もなく半永久的に保持されます。それに対して、人間の記憶は細部まで正確に覚えることは難しく、覚えられたとしても細部から徐々に忘れられています。

詳細なことまで全てを完全に記憶できる力は、理想とも思えるかも知れません。しかし、超人の記憶力を持つ人の話を聞くと、忘却の重要性、忘却できることで良い面が明らかになってきました。

過去の出来事を鮮明な映像として記憶できる超人は、日々の生活で些細な出来事をキッカケとして、次から次へと鮮明の思い出に苛まれることになります。ある事柄に集中しようとしても、過去の記憶が思い出され、物事が進められなくなります。辛い記憶があって、忘却されずに毎回鮮明に思い出し、辛い思いも蘇り、きっと気が狂いそうになるかもしれません。人との別れなどの辛い経験は、時間の経過とともに次第に忘れられ、その辛さが軽減されていきます。

人間の記憶として、細部はぼやけますが、特徴を捉えることが上手く、出来事を要約して記憶しています。例えば、人の顔を見たとき、意識しなければ細部まで記憶していませんが、次回会った時に前回会ったことを思い出せたりします。逆に記憶力が良い超人は、細部まで記憶しているため、次回会った時に同一人物であることの判断が難しくなるそうです。すなわち、枝葉末節まで記憶できるが、要約して記憶する能力が劣っていることになります。そして、記憶を思い出すことが困難になります。

記憶の忘却について、心理学者 エビングハウスが実験結果から提唱した忘却曲線があります。エビングハウスは「節約率(Ratio of Saving)」という概念を導入して、忘却曲線を描いています。「節約率」とは、一度記憶した内容を再び完全に記憶し直すまでに必要な時間(または回数)をどれくらい節約できたかを表す割合を示しています。すなわち、節約率が50%ならば半分は覚えていたことになります。

忘却曲線によれば、20分後に節約率が58%、1時間後に節約率が44%、1日後に節約率が26%、1週間後に節約率が23%、1ヶ月後に節約率が21%と低下していきます。この曲線が示す特徴的な点として、20分後には既に4割ぐらいのことを忘れ、1ヶ月後では2割ぐらいのことは覚えていることです。

日常でも実行しているように、暗記には反復練習が必要となります。反復練習の取り組み方ですが、短期間に何度も繰り返すよりも、時間的間隔をおいて忘却が起こり始めた時点で反復練習を実施すれば、思い出しながら再度記憶して定着させることができます。

すなわち、記憶を活用するには思い出す行為も重要です。反復練習による思い出す行為によって、記憶を取り出す手かがり(記憶のカギ)を入手できます。長期記憶に記録されたとしても、記憶のカギを喪失すれば、その情報を取り出すことができなく、大脳皮質の奥で忘れ去られたままとなるかもしれません。古い記憶で忘れていたけど、なんかのキッカケで記憶のカギを思い出すこともあります。

記憶において、キーワード、イメージ、場所などが記憶のカギとして活用できます。新しい知識を習得するには、まず語彙を増やす必要があります。視覚的なイメージを思い描いて、記憶すべきことを結びつければ、思い出しやすくなります。頭の中にマップを思い描いて、それぞれの特定な場所と記憶すべきことを結びつければ、マップから順番に記憶した情報を引き出せます。

習得したい科目について学習を進めると、学習内容が頭の中で整理されてきて、全体像をマップとして描けるようになってきます。積極的に学習の始めからマップを思い描く手法を活用すべきかもしれません。このような記憶のメカニズムを考慮すると、マインドマップ(Mind Map)を書いてみることも理にかなっています。


参考文献