チーム・マネジメント

有人宇宙の運用管制から、チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

情動の知能指数(EQ)は何の指数?

数十年前では、個人の能力を測定する指標として知能指数(IQ: Intelligence Quotient)がもてはやされていました。IQが高いほど「頭のよさ」を示しており、IQテストで能力を診断することができるため、IQによる評価は分かりやすいです。


確かに一人単独で仕事を進めるならば、IQの高い人の方が成果が上がります。しかし、一般的に言われているように、IQが高い人ばかり集めてもチームとしての成果は上がりません。チームにはリーダーとフォロワーが必要であり、IQが高い人は「自分がリーダーだ」と権力闘争に明け暮れ、悪化すれば足の引っ張り合いを始めます。


そのような中で、新しい指数である情動の知能指数(EQ: Emotional intelligence Quotient)の重要性が頻繁に聞かれるようになってきました。EQの定義は「自己や他者の感情を知覚し、また自分の感情をコントロールする知能」と分かった気がしますが、チーム活動に具体的に活用できるほど理解していませんでした。


個人が備えるEQをどう測定すれば良いでしょうか? 共通化されたEQテストは実施されていませんし、様々なEQ評価方法が提言されています。『EQ~こころの知能指数』の著者 ダニエル・ゴールマンによれば、EQを構成する5つの要素として、自己認識(Self-Awareness)、自己規制(Self-Regulation)、動機づけ(Motivation)、共感(Empathy)、社会的スキル(Social Skill)が識別されています。

自己認識(Self-Awareness)
  • 自分の気分、感情、欲動と、これらが他者に与える影響を認識し、理解する能力
自己規制(Self-Regulation)
  • 破壊的な衝動や気分をコントロールあるいは方向転換する能力
  • 行動する前に考えるため、判断を先送りする性向
動機づけ(Motivation)
  • 金銭や地位以上の何かを目的に、仕事をしようとする情熱
  • 精力的に粘り強く目標に到達しようとする性向
共感(Empathy)
  • 他者の感情の構造を理解する能力
  • 他者の感情的な反応によって他者に対処する技能
社会的スキル(Social Skill)
  • 人間関係のマネジメントとネットワーク構築における熟練
  • 合意点を見出し、調和を築く能力


5つの観点で定性的にEQを評価することにより、自らのEQを客観的に見つめ直し、チームメンバーに適切なアドバイスをすることができます。最初の3つ、自己認識、自己規制、動機付けは自己管理の要素が強いですが、残り2つ、共感、社会的スキルは他人との関係をマネジメントする要素です。


EQの向上について、年を重ねるごとにEQが高まるのは確かかもしれません。私も振り返ると、若い頃は高いIQを求め、周りのことを考えていなかったわけではないですが、目標に向けて一人で突き進んでいました。それから様々な挫折や別れを経験して、まだ不十分ですがEQを習得してきました。私も、5つの観点から定期的に振り返り、現在のEQを確認して、引き続き向上させていきます。



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参考文献