チーム・マネジメント

チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

状況変化を確実に把握するには 【状況把握能力(SA)】

航空宇宙におけるシステム運用にて、人間に求められる基本的な能力として状況把握能力(SA : Situation Awareness)があります。状況把握能力(SA)とは「現在の状況を観測し、現在と近未来における自己や周囲の状況を正しく予測・認識する能力」のことです。状況認識とも訳されますが、ここでは状況把握能力又はSAと呼んでいきます。


状況把握能力によって、重大事故にも繋がりかねない事態を事前に認識し、適切に対処できれば、事故を未然に防ぐことができます。逆に言えば、状況把握を間違って意思決定を行うと、重大事故を招きかねません。SAのレベルは以下のように3段階に区分できます。


レベル1 SA: 認知力(Perception)

最初段階として、取り巻く環境の動的変化や状況を認知することです。システムをモニタしていて、多くの情報やデータから変化を捉え、異常に素早く反応して「何かが変だ」と気づく能力です。大部分の航空事故がこの認知力が欠けていたために生じたとの報告結果もあります。


レベル2 SA: 理解力(Comprehension)

レベル1 SAから得られた情報等を集めて、自らが置かれた状況を解釈して、目標達成に対する影響や全体像を理解する力です。データ間の因果関係(例、機器温度上昇→機器不具合)を理解し、経験から過去の同様なパターンを当てはめ、フレームワークを用いて情報を整理することが上げられます。正確に状況を理解できないことで状況が悪化していきます。


レベル3 SA: 予測力(Projection)

レベル2 SAの理解に基づいて、今後生じる事象や変化を予測する力です。現在起きていることに逐次対処していては、後手後手に回って解決することは困難です。少しでも先を読んで、問題解決の検討や準備する余裕を得て、連鎖する問題の芽を摘むことにより、事故等に発展することを防ぐことができます。


現在のシステムでは、計測センサの高度化や情報処理機器の発達によって、豊富なデータの中からSAに必要な情報を選択しなければなりません。レベル1 SAをサポートするため、警戒警報システム(Caution and Warning System)が導入されています。データの正常と異常が明確であれば、コンピュータは大量のデータから異常値(Anomaly)を確実に検出して警報することができます。


ただし、自動化に頼りすぎると、データベースに設定していない事象が起きると、人間は異常を認識できないかもしれません。新前パイロットより、飛行時間も豊富な機長のほうが当然SAは優れています。その能力を如何に獲得するかは常に探求すべきテーマかもしれません。現場を振り返ってみて、訓練や運用経験を積むことによって、様々のデータ変動の中で異常値の判断に迷いが少なくなります。そのような熟練者が取得したチェック項目、判断材料、盲点となる事項等を後輩へ伝えていくプロセスが、チームとしてSAを高めるために必要かもしれません。


レベル2、3である理解力及び予測力を鍛える訓練として、What if訓練が有効だと考えています。「もし〜が起きたらどう対処するか」という問い掛けをチーム又は一人で検討していきます。例えば「もしスイッチが入らなかったら、これからどうなる、それにどう対処する」と、問答のように進めていきます。実際に全く同じ状況は起きませんが、What if訓練で培った考え方や思考パターンによって、SAが高められて問題を解決することができます。少し大規模な訓練となりますが、シミュレータ(Simulator: 模擬装置)を用いて運用を模擬するシミュレーションも有効です。


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Credit: NASA


参考文献