チーム・マネジメント

有人宇宙の運用管制から、チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

心の状態を把握する 【意識レベル】

機械は、稼働または停止している状態のどちらかであり、今日は調子が上がらないから成果が出ないなどの状態はありません。所定のパフォーマンスが出せないならば、なんらかの異常・不具合が発生していると思われます。


人間ならば朝起きて直後に高いパフォーマンスを発揮するのは困難です。例えば、目覚めのコーヒーを飲むなどして、徐々に注意力をあげて覚醒する時間が必要です。そして、最善の成果を上げるためには、変化する自分の状態を常に把握しながら、状況・環境に応じた状態に切り換えることが求められます。


人間の状態を図る尺度として『意識レベル』があります。大学の実習で毎週レポート作成に追われましたが、フライトシミュレータ実験において、安全人間工学の橋本先生の文献を参考にして、リポートを書いた記憶があります。意識レベルをフェーズ0から4までの五段階に分類しています。


フェーズ0
寝ている状態で注意力はゼロ。

フェーズ1
ぼんやりあるいは退屈な状態で、注意力はほとんど働いていない。

フェーズ2
通常に生活している状態であるいは職場でいつもの仕事をしているような状態で、特に何かに注意を向けているという状態ではない。

フェーズ3
精神活動が活発な状態で、注意力が最もよく働き、注意野も広く、ほとんどミスもおこらない。

フェーズ4
過度の緊張や興奮状態すなわちパニックの状態。

皆さんの意識はどのフェーズにあるでしょうか? 普通に活動しているならば、フェーズ2またはフェーズ3になっているでしょう。一番良い状態は説明するまでもなく、フェーズ3の意識力を持っているときです。特にシステムを運用している場合、プロフェッショナルとしてフェーズ3を維持する技量も必要となります。


24時間を通じてフェーズ3で常にいられるわけではありません。別のことに気を取られたり、他人の会話が気になると、簡単にフェーズ2に切り替わってしまいます。誰かと話をする場合や休暇では、フェーズ2でいる方が適しています。


興味が少なく暇で退屈であれば、幾ら集中しようとしてもフェーズ1から抜け出せません。自分の中で頑張ろうと葛藤していたとしても、打ち勝てずにフェーズ0へ引きづり込まれます。また寝不足な日々が続いていれば、睡魔に襲われて不意にしてフェーズ0まで落ちてしまうこともあります。


フェーズ3も常に安定しているわけではありません。プレッシャーに押し潰されたり、切羽詰まった状況になると、フェーズ4へ到達してしまいます。パニック状態となって、注意が散漫となり、何も手につかず、貴重な時間だけが過ぎて行きます。


すなわち、フェーズ3は一歩間違えばフェーズ4となる危険性もあります。そのリスクを認識して、適時休憩を入れて、緊張状態を解放しておくことも有効かもしれません。また、フェーズ2で十分対応できる場合には、そのリスクを取ってフェーズ3を維持する必要もありません。


しかしながら状況が一変して、緊急性が要求される時、誤りが許されないクリティカルな作業、非常事態において、フェーズ3へギアアップして維持できる能力が求められます。



参考文献