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チーム・マネジメント

チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

管制センター間のコミュニケーションを通して

チーム活動のみでなく様々な機会において、コミュニケーションの重要性が強調されます。ここではコミュニケーション(Communication)について一歩掘り下げて考えています。


"Communication"の語源はラテン語で「分かち合う」を意味する"communicare"とのことです。日本語に直訳すると、伝達、連絡、通信、交信となりますが、意志疎通や情報交換の意味も含まれ、通信手段を示すこともあります。日本には同様な概念がなく、一意に対応する言葉がないため、一般的にカタカナ語「コミュニケーション」として表記されています。


コミュニケーションを図ると言えば、必ず相手が存在して、何らかの内容を伝えることが目的です。相手が理解したことを確認せず、一方的に話すことはコミュニケーションと呼べません。そのため、相手が分かる言葉や表現を用いて、相手の反応によっては説明する内容を変える必要もでてきます。また、相手は初めて説明を受ける内容ですと、理解できるまで準備時間が必要なため、最初はゆっくりと話すべきです。


コミュニケーションの区分として、バーバル(Verbal)コミュニケーション、ノンバーバル(Non Verbal)コミュニケーションに分けられます。バーバルコミュニケーションは純粋に言葉を使ったコミュニケーション、ノンバーバルコミュニケーションは言葉を使わずにそれ以外の方法で情報を伝達(ボディ・ランケージ、手による合図など)することを示します。


通常の会話は、バーバルコミュニケーションと思われがちですが、視覚から認識される相手の表情や態度などノンバーバルの要素も大きな位置を占めます。アメリカの心理学者アルバート・メラビアンが示した「人が好意、反意を表すとき、その伝達に占める割合について、言葉が7%、声のトーンが38%、態度や表情などの非言語が55%だった 」という実験結果が報告されています。


航空管制におけるパイロットと管制官間のコミュニケーション、我々のような宇宙システムの運用管制における管制センター間、宇宙飛行士とのコミュニケーションでは、バーバルコミュニケーションが中心となります。音声のみですと表現できる内容に制限がありますので、一刻を争そう時や緊急事態において音声のみで交信するのは困難です。


チームメンバー間で、共通の用語を使用し、共通のバックグランドを持っていれば、短時間で正確なコミュニケーションを取ることができます。通信規約(Protocol)を決めておけば、スムーズにコミュニケーションが進められます。例えば、管制センターから宇宙飛行士を呼びかける場合、"Station(呼び出し先) Tsukuba(呼びかけ先)on Space-to-Ground 1(使用する音声回線)"と宣言すれば、宇宙飛行士との交信を開始できます。


音声交信で重要とされるのは2ウェイ(Two-way)コミュニケーションを厳守することです。発信先が言っただけですと、途中で無線の故障や聞き落とし等があり、受信先に正確に伝わったのかが分かりません。発信先が交信を完了した後、受信先は聞き取った内容を復唱します。ただし、簡単な内容まで全て復唱するのではなく、受信先は"Copy(分かった)"や"Roger(了解)"などで回答します。


応用例として、2ウェイコミュニケーションは英語による技術調整においても有効に活用できます。欧米人は一方的にしゃべりまくり、普通日本人は聞き手に回るため、その後会話が止まってお互いに沈黙することが良くあります。会話に間が空いた時、自分の理解に基づいて相手の言っていることを復唱すると、相手もこちらの理解度を確認でき、更に踏み込んだ議論を続けることができます。


日本語でのコミュニケーションで特に気を付けるべきことがあります。日本語は文字文化を反映しており、同一音節で多様の意義をもつ言葉が多いです(その言葉の漢字を書けば違いは明確です)。短い単語ほど、他に読み替えたり、簡単の説明を付け加えたほうが良いです。


日本は単一民族国家であり、社会常識を共有していると思っているため、「分かっていると思った」、「相互に理解していると思った」、「いわなくてもよいと思った」など、その場の雰囲気によって詳細で確実な情報伝達が省略されることがあります。相手が分かっているかもしれないが、なるべく話して、ミス・コミュニケーションを防止しなければなりません。



参考文献