チーム・マネジメント

有人宇宙の運用管制から、チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

リーダーシップだけで大丈夫か?

チームが機能するためには、リーダー(Leader)を選出して、リーダーの指揮の下で目標に向かって活動していきます。そのため、チームを率いるリーダーシップ(Leadership)が必要です。そのような一般的なリーダーシップ論はその通りだと思います。ただし、現場で実感することはフォロワー(Follower) 注1 の立場も重要ということです。フォロワーがいないリーダーがいたら、もはやリーダーと呼べません。
 
注1: ここで「フォロワー」とは、SNS等で用いられる特定の人の活動を追っている人の意味ではなく、チーム・メンバーでリーダーを補佐する人を示しています。
 
リーダーとフォロワーの間で指揮系統における上下関係は明確です。しかしながら、幾らリーダーが偉くても、フォロワーが動かなければチームとしての成果は上がりません。通常、トップにリーダーがいて配下にフォロワーが置かれ、フォロワーがリーダーに従っている絵を描きがちです。
 
成果を上げるには、目的(Purpose)の周りをリーダーとフォロワーが役割に応じて回っている(下図参照)、そんな考え方の転換が必要なのかもしれません。変化が激しい現代において、状況に応じて、フォロワーだった人を新しいリーダーへ選び、旧リーダーもフォロワーとしてチームに貢献する。そんな姿が普通になってくると思います。

 
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Figure from the Courageous Follower.

リーダーシップを言い換えると、チームの舵取りをするため、フォロワーに対する影響力の行使であると言えます。リーダーは、小規模チームで一人、大規模チームでも少数にすべきです。大勢のリーダーがいて、ひとりは右に行こう、他のリーダーが左へ行こうとするとチームとして進めません。私の経験でも、上のポジションの人がそれぞれ意見を述べるが、何も決まらず、現場が動けなくなったことがあります。
 
その影響力とは、経験や知識、意欲とそれに伴う考え方や行動、そして人間的魅力や他人からの信頼感等の組み合わせによって成り立つ力です。カリスマ(Charisma)と呼ばれるほどの才能は必要ないですが、チームをまとめ上げるにはある程度惹きつける力が求められます。
 
それに対して、フォロワーシップ(Followership)とは、チームの目的達成に向けてリーダーを補佐し、必要ならば自発的に意見を述べ、リーダーの誤りを訂正する役割を担うことです。上司に服従している部下(Subordinate)と異なり、リーダーのビションに共感を抱いて情熱を注ぎ、自ら奮起して成果を得ることができる人です。

フォロワーとして困難を感じるのは、リーダーの判断が違うと思ったり、チームのためにならないと感じた時です。上下関係の力のバランスを考慮する必要がありますが、リーダーへ発言すること、真実に従って行動することが求められます。私もフォロワーとして自分の意見を伝えて厳しい状況に置かれたこともあります。そうならないように、リーダーもフォロワーシップについて理解して、日頃からお互いに信頼関係を築いておく必要があります。

ほとんどの業種では、決まりきった出世コースを一段一段、確実にのぼっていく。でも、宇宙飛行士は絶え間なく上がり下がりを繰り返し、色々な役割や地位を代わりばんこに担う。組織という観点からみると、これにはちゃんと意味がある。宇宙プログラムをあらゆるレベルで強化し、人類の知識と能力の限界を押し上げるという共通の目標に向けて、全員を一致団結させるわけだ。この目標は、僕たち一人ひとりよりもずっとデカいものなんだ。  カナダ宇宙飛行士 クリス・ハドフィールド