チーム・マネジメント

チームマネジメント、人間-機械システム、そしてヒューマンファクターズを考える

決定事項よりも決定プロセス 決断遅れのリスク 【意思決定】

様々な重要な場面において「意思決定」との用語が用いられるようになりました。ところが、日本語として「意思決定」は新しい用語であり、国語辞書(広辞苑など)にも載っていません。ご承知のように意思決定はDecision Makingの日本語訳です。Decisionは、決…

問題の核心に迫る "なぜ" × 5 【なぜなぜ分析】

トヨタ方式のカイゼンの一つとして、「不良品が出たのはなぜか、『なぜ』を5回考えろ」という考え方が良く知られています。『なぜなぜ分析』とも呼ばれています。単純ですが、極めて有効な手法です。国内のみに限らず、アマゾン創業者ベゾスも、配送センタ…

その変化の成果に対する影響を評価する 【感度解析】

感度解析(Sensitivity Analysis)は、いくつかのパラメータが変動した時、結果にどの程度の影響を与えるかを調べる手法です。感度解析について解説しようと思っていたのですが、先ず微分(Differential)から考える必要がありそうです。高校の数学で初めて微分…

忘れやすい人間が間違いなくシステムを操作するには 【チェックリスト】

業務に追われる毎日の中でTo Doリスト(やらねばリスト)を活用しています。To Doリストの活用方法は人それぞれ異なり、ノートや付箋に記入したり、パソコンやスマートフォン等のアプリを活用するなどです。ただし、基本的な機能はシンプルで、作業項目の洗…

遠隔地からシステムを操作するために必要なこと 【テレメトリ】

遠隔に設置したシステムを監視したり、目視等で確認できない状態をセンサで計測してデータとして送信することを遠隔測定(テレメトリ: Telemetry)と呼んでいます。地上ネットワークに接続されたシステムならば有線で伝送されますが、航空機や宇宙システムな…

意見の違いや対立を乗り越えて 【ディスカッション】

外国人と英語による会議となると、日本人のように発言者の声に耳を傾け、参加者の発言は少ない、静かな会議にはなりません。参加者は積極的に発言して割り込んできて、時として議論が発散してしまいます。日本人の習慣として気をつけたい点として、特に欧米…

栄光の歴史を重ね、築き上げられてきた言葉たち 【信条】

マーキュリー計画、ジェミニ計画、アポロ計画を通じて築かれ、受け継がれているNASA運用管制官の信条(Credo)があります。ヒューストンにある管制センターのいたる所に掲示され、ミッション管制の設立趣旨(Foundations of Mission Control)とも呼ばれています…

情熱を秘めて、目標を実現させる力 【モチベーション】

仕事、スポーツ、そして勉学においても、モチベーション(Motivation)が重要視されることが多くなってきました。モチベーションが高ければ、強い動機づけを受け、物事を行う意欲が高まります。しかし、常時高く維持するのは困難であり、低下している時には何…

業務におけるマニュアルの必要性を省みる 【作業標準】

今日では業務を進めるに当たり、細かな仕事までマニュアル化が進められています。マニュアル至上主義やマニュアル否定など様々な見解がありますが、明らかにマニュアルによる有効性と弊害は認識しておく必要があります。マニュアル(Manual)には、「手動によ…

時を駆け抜ける 【標準時】

昼や夜のどんな時にも、太陽や星を見て、正確な日時を言える珍しい人に会ったとしよう。・・・この人物は、時を告げる驚くべき才能の持ち主であり、その才能で尊敬を集めるだろう。しかし、その人が、時を告げる代わりに、自分がこの世を去った後も、永遠に…

危機を伝える匂い 感情となる匂い 【嗅覚】

人間の五感のなかで「嗅覚」は、匂いを検知する仕組みが複雑であり、動物的な側面も強く、未だ不明な点が多くあります。鼻腔の奥にある匂い受容体が揮発性の化学物質による刺激を受けることで「におい」を感じます。嗅覚のメカニズムとして、受容体が様々な…

空を飛ぶために 宇宙へ向かうために 【シミュレーション技術】

シミュレーション(Simulation)とは「システム挙動をほぼ同じ法則に支配される他のシステムまたはコンピュータによって模擬すること」を意味します。航空の分野でも古くから活用されています。例えば、航空機の空力特性を計測するため、実機サイズに対する実…

環境変化に耐えられる力 【ロバスト性】

システム開発において、想定した環境下において、当初の目的を達成するシステムを開発する。当然なことと思いますが、想定外の状況となっても、必要最低限の機能は維持されるべきであり、システムを崩壊を食い止めなければなりません。2011年 福島原子力発電…

現代における技術継承を再考する

日本語で『技術』と言うと、「物事をたくみに行う技巧」から「科学の理論を実際に応用し、自然を人間生活に役立つように利用する手段」までの広い意味を含んでいます。技術に訳される英単語を列挙してみると、テクノロジー (Technology)、エンジニアリング (…

記憶のメカニズムを理解する (後半) 【長期記憶】

長期記憶の特徴として、人間は時間経過とともに記憶が忘却していくことがあります。機械ならば一度データを外部記憶装置(HDD、SSD等)に記憶させれば、故障がない限り、データ欠損もなく半永久的に保持されます。それに対して、人間の記憶は細部まで正確に…

記憶のメカニズムを理解する (前半) 【長期記憶】

以前の記事人間の情報処理能力 【コンピュータとの違い】 - チーム・マネジメントにて、人間の情報処理能力をコンピュータと比較して考察しましたが、今回は記憶に焦点を当てていきます。まず、短期記憶と長期記憶について再度振り返ってみます。我々は起床…

何気なく扱っているデータと情報の違いは? 【情報エントロピー】

現代ではデジタル化(Digitize)が普及して、多くのことがデジタル変換され、データとして処理されています。情報通信技術(ICT: Information, Communication, and Technology)の発達を受けて、大量なデータが生成され、蓄積され、低コストで世界中を駆け巡って…

システム運用における規則を再考する

一概に規則(ルール)といっても、法律、組織内規定からチーム・ルールに至るまで範囲が幅広いです。人は生活を通して社会ルールを理解して自然と身につけてきます。これまでの学校教育において、日本国憲法、民法、刑法について、1条から順番に全ての条文…

全体として捉える知覚、感覚の延長 【ゲシュタルト】

人間が対象を知覚するに当たって、対象を全体として捉える特徴があります。この特性のことをゲシュタルト(独:Gestalt)と呼んでいます。ゲシュタルト特性を自覚させてくれる作品は数多く製作されており、ネットでキーワード『Gestalt』で画像検索すると参照…

自動化がもたらす弊害 【ボーダム・パニック】

人間の労働が機械に置き換えられたり、データ処理の大部分を情報処理システムが担うなどの自動化(Automation)が進められています。繰り返しの単調作業や物理的に人を超えた力が必要される作業には機械が導入されています。航空宇宙の分野でも、初期の航空機…

チームにおける権威とは 【権威勾配】

チームで活動するにあたり、リーダーにはフォロワーを追従させる権威(Authority)が与えられることになります。リーダーが専門知識や技術に秀でており人格も優れていれば自然と権威を伴いますが、リーダーと言う名だけの権威でチー ムを引っ張っていくには無…

Coffee Break 【カフェイン効果】

寝不足が続いたり、睡魔に襲われそうな疲労を感じたときには、カフェイン効果を期待して、多めにコーヒー等を飲んだりしてしまいます。カフェイン効果を感じる時もありますが、頭の中がスッキリと覚醒しなかったり、コーヒーの飲み過ぎだけど夜に寝れたりし…

危険や不測の事故を避けるために 【ハザード制御】

ハザード(Hazard)と聞いて何を思い浮かべるでしょうか? 自動車の非常点滅表示灯のことをハザードランプ(Hazard Lamp 英語ではHazard Lights)単にハザードと呼んでいます。他には、著名なゲームを通じてバイオハザード(Biohazard)をご存知の方も多いと思いま…

会話における第一人称の重要さ

チームとして活動しているとき、何気ない会話においても第一人称の使い方でチームとして一体感が出たり、コミュニケーションに壁ができたりします。特に作業場所が隔てられ、音声のみで調整する場合には、特に第一人称を意識して会話することが重要です。宇…

【惨事(Tragedy)】 アポロ1号 火災

人命喪失に繋がった重大事故としてNASAが乗り超えてきたアポロ1号の火災事故があります。3名の宇宙飛行士 グリソム、チャフィー、ホワイトが地上試験中に命を落としました。ここでは事故の詳細まで深入りしませんので、興味がある方はWikipediaにUSサイト…

疲労という自らの強敵に対峙する

連日忙しかったり、寝不足が続けば、疲労(Fatigue)を感じ、徐々に蓄積してきます。気合を入れて疲労を克服するとか、疲れた顔で頑張っていることをアピールするとかあるかもしれません。しかし、人間は疲労が溜まってくれば、本来の実力は発揮できず、精神的…

何のための最善か? 【最適化】

最適化(Optimization)との用語は一般的に用いられていますが、最適制御(Optimum Control)を研究していた立場から気付き事項を述べておきます。始めに学術的になってしまいますが、最適化問題とは何かと言う問いから入っていきます。 最適化問題とは、ある制…

チームとしての訓練 【クルー・リソース・マネージメント】

チーム育成を考える上で、航空分野で進められている取り組みから学ぶことが多いです。その中でも、航空事故の教訓からクルー・リソース・マネージメント(CRM: Crew Resource Managment)が生み出され、CRMに基づいた訓練は個人のスキルアップを目指した従来型…

暗記ではなく行動の記憶 【スキル】

知識が価値を生む時代になり、情報やデータが重要視されるようになりました。科学技術の発展を受けて、膨大なデータを蓄積・処理できるようになり、ニュース等でもビッグデータというキーワードが頻繁に使われています。その広大なデータの海から必要な情報…

システムの内部を見えるのか? 操作できるのか? 【現代制御理論】

本ブログでは、チームに焦点を当てていますが、ミッションを達成するため、チームはシステムの一部として活動する必要があります。システムという概念は様々な対象に当てはめられますが、ここでは組織や人間-機械システムに対する考察も進めていきます。 私…

情動の知能指数(EQ)は何の指数?

数十年前では、個人の能力を測定する指標として知能指数(IQ: Intelligence Quotient)がもてはやされていました。IQが高いほど「頭のよさ」を示しており、IQテストで能力を診断することができるため、IQによる評価は分かりやすいです。 確かに一人単独で仕事…

状況変化を確実に把握するには 【状況把握能力(SA)】

航空宇宙におけるシステム運用にて、人間に求められる基本的な能力として状況把握能力(SA : Situation Awareness)があります。状況把握能力(SA)とは「現在の状況を観測し、現在と近未来における自己や周囲の状況を正しく予測・認識する能力」のことです。状…

フィードバック機構を組み込む 【クローズド・ループ】

私の専門は制御工学ですので、制御工学の観点からのアイデアも述べていきます。制御工学において、制御対象(Controlled Object)は何でも対象とすることができます。制御工学に関する専門書では、数式(初めての方はラプラス変換で戸惑います)を用いて理論が…

限りあるリソースの中で 【パレートの法則】

時間に追われ、やるべき仕事が積み上がっていく、それは日常かもしれません。運用管制でも例外ではなく、1秒、1分を争うタスクがあり、次から次へと作業依頼・リクエストが届き、その対応に追われます。そんな中でもシステムに不具合が生じれば急いで対処…

シフト勤務の大変さ 【体内時計をズラす】

便利の世の中になり、24時間営業も珍しくない時代になりました。朝出社して夕方帰宅する、そんな普通の勤務をここ数年したことありません。シフト勤務、特に夜勤の大変さがよくわかります。500万年前に地球上に人類が誕生して、日が登ると活動を開始し、日が…

信頼性を数値化して向上させる 【冗長設計】

宇宙システムは、軌道上での修理が困難であり、一つの故障で全体のミッションを達成できなくなる可能性があります。また、開発費が高額に上り、人間が内在する有人機もあります。このようなシステム開発には、信頼性工学(Reliability Engingeering)が適用さ…

人間を育てる難しさ 教えるのか? 学ばせるのか?

やってみせて、言って聞かせて、させてみて、 ほめてやらねば人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。 連合艦隊司令長官 山本 五十六 教育や人材育成は組織にとって…

何事も起こるべくして起こる 【マーフィーの法則】

学術的に提言されたわけではないですが、有名な経験則としてマーフィーの法則(Murphy's Law)があります。色々なバージョンがありますが、基本的な表現として"If anything can go wrong, it will" - 「うまく行かなくなる可能性があるものは、うまく行かなく…

システムを統合せよ 【インテグレーション】

現代において、全てのシステムをメーカー1社で設計・製造されることは少なく、一部を外注したり、汎用品・民生品を調達することになります。ある程度大規模なシステム開発ともなれば、機能や部分で分割したサブシステム毎に詳細設計、製造・試験が進められ…

チーム・ミーティングを反省する

会議・ミーティングが好きな人もいるかもしれませんが、私は現場の仕事に集中したいので、なるべく出席したくありません。退屈な会議ならば貴重な時間が奪われて行くような気がしてなりません。実際に一つの会議を開催すれば、(時間)×(人数)×(時給)で計算さ…

心の状態を把握する 【意識レベル】

機械は、稼働または停止している状態のどちらかであり、今日は調子が上がらないから成果が出ないなどの状態はありません。所定のパフォーマンスが出せないならば、なんらかの異常・不具合が発生していると思われます。人間ならば朝起きて直後に高いパフォー…

大規模システムを管理するには 【コンフィギュレーション】

宇宙システムに関わるようになってから、コンフィギュレーション(Configuration)との用語を頻繁聞くようになりましたが、最初は明確な意味がわかりませんでした。辞書を引いてみると、コンフィギュレーションとは「要素・部分の相関位置、配置。電算機でデー…

管制センター間のコミュニケーションを通して

チーム活動のみでなく様々な機会において、コミュニケーションの重要性が強調されます。ここではコミュニケーション(Communication)について一歩掘り下げて考えています。 "Communication"の語源はラテン語で「分かち合う」を意味する"communicare"とのこと…

人間の情報処理能力 【コンピュータとの違い】

日々の生活や仕事において、目や耳などから情報を得て、頭の中で考え又は反射的に行動しています。当たり前のことですが、人間の動きを調査して、情報処理システムに当てはめ、人間の特徴や能力の限界を明らかにする研究が進められています。この研究を知っ…

アポロ計画を成功に導いた段階的プロジェクト計画法 【PPP】

アポロ計画「1960年代中に人間を月に到達させる」というミッションを実現させるため、NASAが採用した手法として『段階的プロジェクト計画法(PPP: Phased Project Planning)』があります。ドイツでロケットを開発して第二次世界大戦後にアメリカへ渡り、アポ…

リーダーの資質 【4-Dシステム】

リーダーには、権威を用いて引っ張るタイプ、メンバーの意見を聞きながら先導するタイプ、メンバーを指導しながらチームを育成していくタイプなど、様々なスタイルが見受けられます。職場のリーダー、クラブ活動のリーダー、メディア等を通じて知るリーダー…

人はなぜ間違うのか? 【ヒューマンエラー】

『人間は間違いをおかす動物である』 自分の行動を省みて心当たりが沢山あります。幾ら訓練を積んで、ベストを尽くそうとがんばっても、人間はエラーを起こします。先ずは冷静にその事実を受け入れる必要があります。 人間の感覚ズレを自覚する例として、目…

ヒューマン-マシーンシステム 【SHELLモデル】

人間が介在するシステム(Human-Machine System)の概念モデルとして、SHELLモデルがあります。SHELLとは、ソフトウェア(Software)、ハードウェア(Hardware)、環境(Environment)、人(Liveware)、人(Liveware)の頭文字を取った名称です。SHELLモデルは、ヒュ…

リーダーシップだけで大丈夫か?

チームが機能するためには、リーダー(Leader)を選出して、リーダーの指揮の下で目標に向かって活動していきます。そのため、チームを率いるリーダーシップ(Leadership)が必要です。そのような一般的なリーダーシップ論はその通りだと思います。ただし、現場…

人間が生存する意義 【Human Factors】

組織とは、法律上の擬制である。組織そのものは、何も計画できず、何も決定できず、何も行動できない。計画し、決定し、行動するのは、一人ひとりの人間である。 ピーター・ドラッカー 高度に科学技術が発達し、情報が瞬時に世界中を駆けまわり、国家やグロ…